ミトコンドリアDNAのCpG配列のうち、8領域についてメチル化特異的な増幅によりメチル化率を解析した。メチル化特異的な増幅ではメチル化配列および非メチル化配列を標的とするプライマーの設計を行い、フォワードおよびリバースプライマーの両方向にCpG部位を含むようにプライマーを作成した。口腔粘膜細胞のDNAはバイサルファイト処理を行い、メチル化特異的な増幅により代表的なDNAのメチル化率を決定した。なお、メチル化率はリアルタイムPCRを用いた独立した増幅により得られたCq値を使用して計算した。メチル化率が1%以上であったものは、2領域(塩基番号16453および塩基番号91を含む領域、塩基番号1216と塩基番号1322を含む領域)であり、他の6領域についてはメチル化率が1%以下あるいは定量に十分な増幅が認められなかった。 メチル化率が1%以上のものが観察された2領域(4か所)についてメチル化率を詳細に検討するため、一塩基伸長反応を用いて50名のDNAからメチル化率を決定した。4か所のCpG部位のうち、明確な判定が可能であったものは塩基番号16453および塩基番号1322のCpG部位であった。また、観察されたメチル化率は塩基番号16453では平均値±標準偏差が1.7%±0.9%であった。一方、塩基番号1322のメチル化率は塩基番号16453よりも高く2.7%±0.8%であった。ミトコンドリアDNAのメチル化率の測定は、ミトコンドリアDNA型が一致する場合であってもメチル化率に基づいた個人識別へ利用の可能性が示されたが、メチル化率が高いものでも5%以下であるため、複数回測定するなど判定精度を高める工夫が必要であると考えられた。
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