研究課題
【今年度】継続して骨以外に分析試料が採取できなかった事例について、骨抽出物からの薬物分析を行った。①今年度の分析事例数:10事例、そのうち2事例で薬物が検出された。②検出薬物:メトフォルミン、メマンチン。【期間全体の成果】白骨事例では形態学的観察と遺伝子型検査以外に実施できる検査はなく、死因や死亡直前の死者の身体状況の推定には困難を極める。骨からの薬物分析の報告は少なく、検出薬物の統計的調査もない。また確立された分析方法もない。本研究では白骨事例の薬物検出の状況を把握し、効率的な分析方法を提案することである。①白骨事例での薬物検出状況:白骨事例70事例中11事例(約16%)で薬物が検出された。②検出薬物:フルボキサミン、スルピリド、クロルフェニラミン、ピラセタム、メトフォルミン、メマンチンが検出された。③抽出法の検討:メタノール抽出よりアセトニトリル/水抽出+NaCl塩析法がよく、試料溶解液はアセトニトリルより初期移動相がよく、分析前にPTFEフィルターで異物を除去することが望ましいという結果が得られた。10回連続抽出では3-4回で検出限界値以下となり、24時間加温振盪抽出と超音波を用いた常温10分抽出法では同程度の抽出効率であったことから、超音波常温10分抽出を3-4回行えば骨に含まれる薬物のほぼ全量を抽出できることが示唆された。【まとめ】白骨事例の薬物検査を行い検出頻度や検出薬物を調査した。その結果、白骨事例の約16%で精神神経用薬や抗ヒスタミン剤、糖尿病治療薬が検出された。また、抽出方法を検討した結果、通常のアセトニトリル/水抽出+NaCl塩析法で、超音波をかけて常温で10分間の抽出を3-4回行えば十分な抽出ができることが示唆された。白骨事例でも薬物検査を行うことは有用で、それにより死亡直前の身体状況を推測することができる可能性がある。