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2017 年度 実施状況報告書

溺死診断のためのTaqMan PCRを用いた水棲微生物の迅速な多検体同時検出法

研究課題

研究課題/領域番号 17K09268
研究機関宮崎大学

研究代表者

湯川 修弘  宮崎大学, 医学部, 教授 (30240154)

研究分担者 柿崎 英二  宮崎大学, 医学部, 准教授 (70284833)
園田 愛  宮崎大学, 医学部, 助手 (10762122)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード法医学 / 溺死の診断 / リアルタイムPCR / 水棲細菌 / 水棲微生物
研究実績の概要

溺死は診断することの難しい死因の1つである.一般に溺死の診断は解剖によって得られる所見に加えて,各種検査所見(プランクトン検査・胸腔液電解質検査・死後画像診断・薬毒物検査等),現場環境,病歴や診療記録,警察の捜査等を考慮し総合的に判断されている.しかし診断に苦慮する場合もあり,新しい検査法の確立は,診断精度の向上に急務である.
平成29年度は「淡水性の水棲細菌」を簡単かつ広く検出するためのTaqMan PCR法のPrimer設計及びTaqMan Probeの設計を中心に実施した.簡便かつ迅速な溺死のスクリーニング検査を可能にするためには,指標とする水棲細菌の対象は,種レベルではなく,多数の種を一度に検出可能な属レベルであることが望ましい.そこでこれまでの研究成果から,淡水溺死の指標として最も有効であったAeromonas属細菌(A. hydrophila,A. punctata,A. salmonicida,A. veronii等)を一括して検出できる属特異的プライマーセットを設計した.標的遺伝子として16S,5S,23S,ITS,aerolysin, gyrase subunit B, chitinase, catalase, transmembrane regulatory protein, hemolysinなどを検討した.日本DNAデータバンク(DDBJ)から各遺伝子の塩基配列情報を取得し,GENETYX-MAC Ver.15.0などのソフトウェアを用いてアライメント解析を行った.さらにBLASTを利用しデータベース上で特異性を確認した.また,プライマー及びTaqMan Probeの特異性を検討するためにNBRC(NITE Biological Resource Center)より購入した標準菌株10属17種(Aeromonas属2種,Vibrio属3種,Photobacterium属3種, Escherichia属1種,Listonella属1種,Pseudomonas属2種,Citrobacter属1種,Enterococcus属1種,Proteus属1種,Shewanella属2種)について,純粋培養しそれらを集菌後,ゲノムDNAを抽出・精製した.現在,設計した様々なプライマーセットの有効性を検討中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の目的は,簡便かつ迅速な溺死のスクリーニング検査法を開発することであり,従来行ってきた検査よりも必要とする時間や労力を可能な限り軽減しシンプルにしなければならない.そこで,指標とする細菌の対象は,種レベルではなく,多数の種を一度に検出可能な属レベルであることが望ましい.しかし,属レベルで共通するプライマー配列を設計し,さらに実際に他の細菌種に対して交叉性(偽陽性)を有しない配列を決定するのは非常に困難であり,解析・設計・検討に多くの時間を要した.最終的に信頼性の高い検査法を確立するためには,この段階での十分な検討が大切であり,また本年度の遅れは次年度にさほど影響しないと考えている.

今後の研究の推進方策

本研究は日常の法医実務において,利用可能な検査方法の開発を目指している.今後はまずReal-time PCR法にとって最適なプライマーセットを完成させるために,特異性や検出感度を引き続き検討していく.淡水溺死の指標としてAeromonas属,海水溺死の指標として,Vibrio属及びPhotobacterium属,さらに進捗状況によって,植物プランクトンを検出するための葉緑素遺伝子を指標としたプライマーセットも検討し決定したい.

次年度使用額が生じた理由

本年度は,水中死体における従来の検査件数が増加したため,その対応に多くの時間を要した.また,本研究にとって最も重要な淡水性細菌の選定やそれらを特異的に検出するためのプライマー設計及びTaqMan Probeの設計に十分に時間をかけたため,使用額を低く抑えることができた.次年度は,Real-time PCR装置を当教室に設置するため,その経費を充てる予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 特集 次世代シーケンサーが可能にした感染学の新しい展開,4. 臨床への応用(Clinical Sequencing),4)法医学への応用2017

    • 著者名/発表者名
      柿崎英二,湯川修弘
    • 雑誌名

      化学療法の領域

      巻: 33 ページ: 143-151

  • [雑誌論文] 一酸化炭素中毒の法医学講義ノート(Haldaneの第一法則・第二法則)2017

    • 著者名/発表者名
      湯川修弘,園田 愛,柿崎英二,落合秀信
    • 雑誌名

      法医学の実際と研究

      巻: 60 ページ: 219-235

    • 査読あり
  • [学会発表] 水中死体の肺及び血中に存在する水棲微生物の網羅的解析(第2報):法医解剖32例のメタ16S解析2017

    • 著者名/発表者名
      柿崎英二,小椋 義俊,林 哲也,湯川修弘
    • 学会等名
      第101次日本法医学会学術全国集会(岐阜)
  • [学会発表] 溺死診断のためのLAMP法を用いた簡易検査法の開発(第2報):Vibrio属・Photobacterium属細菌の一括検出2017

    • 著者名/発表者名
      園田 愛,柿崎英二,酒井正博,湯川修弘
    • 学会等名
      第101次日本法医学会学術全国集会(岐阜)
  • [学会発表] 一酸化炭素中毒の法医学講義ノート(Haldaneの第一法則・第二法則)2017

    • 著者名/発表者名
      湯川修弘,園田 愛,柿崎英二,林 里采
    • 学会等名
      第67回日本法医学会学術九州地方集会(那覇)

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公開日: 2018-12-17  

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