研究課題/領域番号 |
17K09271
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
新谷 香 (石田香) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345047)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カルパイン / 虚血再灌流 / TGF-β1 / リモデリング |
研究実績の概要 |
罹患率が高く、突然死を引き起こす心不全の多くは心筋梗塞後の代償機転である心室リモデリングが破綻した結果である。予後不良な心室リモデリングは間質と血管周囲の線維化が特徴であるが、申請者は、心筋梗塞後にカルシウム依存性プロテアーゼであるカルパインの活性化が引き起こされていることを見出した。近年、線維化誘導因子であるアンギオテンシンII(AngII)やトランスフォーミング増殖因子TGF-β1とカルパインの関連が報告されている。そこで、本研究ではAngII-TGF-β1経路を介した血管周囲性線維化とカルパインの関係を明らかにし、心筋梗塞後に起こるリモート領域線維化の病態を解明することを目的とした。 ラット左冠状動脈結紮による心筋梗塞モデルにおいて、虚血30分再灌流後5分というごく早期に心臓を採取し、ウェスタンブロッティングや免疫組織染色を行ったところ、心臓血管の平滑筋に局在するμ‐カルパインが活性化し、不活性な潜在型のTGF-β1(latent TGF-β1)のタンパク質発現が有意に増加していた。一方、latent TGF-β1のmRNA量は変化していなかった。カルパインはlatent TGF-β1の活性化に関与することが報告されているが、この再灌流5分後の時点では、TGF-β1の活性化や、TGF-β1のターゲットとなるケモカインmonocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1)の発現上昇は起こっていなかった。一方、カルパイン阻害剤をラットに投与すると、虚血再還流後のlatent TGF-β1タンパク質の発現上昇が抑制された。これらの結果から、活性化カルパインはlatent TGF-β1の発現に翻訳レベルで関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再灌流5分後の時点ではTGF-β1の活性化が起こっておらず、カルパインがTGF-β1を活性化するという仮説は覆ったが、カルパイン阻害剤の実験で、TGF-β1との関連が示唆され、おおむね計画通りに実験が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
虚血再灌流後のカルパイン活性化と latent TGF-β1発現増加のメカニズムについて検討する。具体的には、TGF-β1タンパク質の翻訳を制御するといわれているmiRNA(miRNA-133aなど)について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
活性化カルパインのTGF-β1への関与の分子機構が我々の仮説と異なっていたため、当初の研究計画が若干変更となり、研究費使用予定額に差異が生じた。次年度は、miRNAとカルパインの関係性についての新たな仮説について検証を行なう必要があるため、これに必要な研究費を次年度使用額に充てる予定。
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