研究実績の概要 |
心臓突然死の多くは急性心筋梗塞などによる虚血性心疾患が原因であるが、心筋凝固壊死や炎症細胞浸潤など明らかな病理組織学的変化が生じる前の超急性期に死亡し、死亡直前の臨床症状や心電図等の検査所見がない場合、法医解剖を行っても心臓突然死と診断することは困難である。近年、非破壊解析が可能なラマン分光法を心筋虚血をはじめとした医療分野に用いることが期待されている。本研究はラットの心筋梗塞モデルを用い、ラマン分光法を用いて、ex vivoでラマン分光法の有効性が示されている虚血性変化を、死後の心臓組織で捉えることを目的としている。 ラットの左冠状動脈(LCA)を20分結紮した後の摘出心臓を梗塞モデルとし(I群)、LCAの結紮なく開胸のみで20分後の心臓をコントロール(C群)とした。また、死後経過モデルとして、LCAを20分結紮したのち安楽死後に閉胸し、1日室温で静置した後の摘出心臓を死後経過1日の梗塞モデル(IN群)とし、LCA結紮なく開胸20分後に安楽死後に閉胸し、1日室温で静置した後の心臓を死後経過1日のコントロール(N群)とした。各心室の横断面から、EB非染色部(虚血部)、同じ部位をコントロール心臓から採取し、各組織をラマン分光測定した。それまでのA研究所では測定の継続ができないと判断し、最終年度は、B研究所で測定を行った。 測定したラマンスペクトルのピーク強度、二次微分後のピーク強度を規格化したのちに4群比較を行った。既報の750,1127cm-1ではC/I群の間で有意な差を認めなかったが、1303,1337,1545,1555,1604cm-1においてN/IN群の間で有意差を認め、死後に心筋梗塞を判断できる可能性が示唆された。
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