研究課題/領域番号 |
17K09273
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
工藤 利彩 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20347545)
|
研究分担者 |
羽竹 勝彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40164842)
勇井 克也 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50783875)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | エタノール / iEDHF / 血管機能 |
研究実績の概要 |
9週齢の雄性Wistarラットを用い、通常固形control食(S-control)群、Lieber’s control食(L-control)群とLieber’s エタノール食(EtOH)群の3群に分け、ともに10週間飼育した。 各群のラットから摘出した上腸間膜動脈のリング標本に細胞膜電位感受性色素DiBAC4(3)を30分間負荷した後、張力-蛍光強度(膜電位)の同時測定を行った。いずれの群においても、10μMフェニレフリン添加により、血管は収縮し、蛍光強度は増大した。すなわち、この結果は、収縮の増大とともに細胞膜が脱分極したことを意味している。さらに、フェニレフリン収縮がピークに達したところに、100nMアセチルコリンを添加し、張力-蛍光強度を3群で比較したところ、2つの対照群に比べ、EtOH群で弛緩率は有意に増大し、蛍光強度も有意に低下した。これらの結果から、EtOH群におけるアセチルコリンによる弛緩反応の増大には、細胞膜の過分極が関与していることが明らかになった。 ウエスタンブロットにより、上腸間膜動脈におけるiEDHF関連酵素15-LOとsEHのタンパク発現量の違いをL-control群とEtOH群で比較検討したところ、15-LOの発現量はEtOH群で有意に増大した。一方、sEHの発現量についてはEtOH群で増大傾向を示したものの、L-control群との有意な差は見られなかった。sEHの発現量については増加と低下のいずれの可能性も考えられる。すなわち、sEH発現が増加する場合、エタノールは11,12,15-THETAの経路を介して弛緩を増強し、sEH発現が低下する場合、エタノールはもう一方の15-H-11,12-EETAの経路を介して弛緩を増強することが考えられる。この点については、今後、15-LOとsEH のmRNA発現量を比較し、総合的に検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の実験計画通り実施した。適量飲酒モデルラットにおける弛緩反応の増大にiEDHFの経路が関与することが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度に得られた成果をもとに引き続き研究を進め、さらに、15-LOとsEH のmRNA発現量を比較し、総合的に検討する予定である。 iEDHFの経路に対するエタノールの詳細な作用機序を明らかにすることにより、適量飲酒による心血管病の予防効果を血管機能の観点から明らかにする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入した落射蛍光顕微鏡 EVOS FL Cell Imaging System(Thermo Fisher Scientific K.K.)が、キャンペーンのため予定より安価で購入できたため当該助成金が生じた。今後、翌年度分として請求した助成金と合わせて実験計画書通り研究を進める予定である。
|