9週齢の雄性Wistarラットを用い、通常固形control食(S-control)群、Lieber's control食(L-control)群とLieber's エタノール食(EtOH)群の3群に分け、ともに10週間飼育した。 各群のラットから摘出した上腸間膜動脈のリング標本に細胞膜電位感受性色素DiBAC4(3)を30分間負荷した後、張力-蛍光強度(膜電位)の同時測定を行った。フェニレフリン収縮がピークに達したところに、100nMアセチルコリンを添加し、張力-蛍光強度を3群で比較したところ、2つの対照群に比べ、EtOH群で弛緩率は有意に増大し、蛍光強度も有意に低下した。これらの結果から、EtOH群におけるアセチルコリンによる弛緩反応の増大には、細胞膜の過分極が関与していることが明らかになった。 L-control群とEtOH群のラットから摘出した上腸間膜動脈におけるeNOSとiEDHF関連酵素15-LOのmRNA発現量を比較したところ、eNOSの発現量は両群間に差はなく、15-LOの発現量はEtOH群で有意に増大した。 さらに、ウエスタンブロットにより、eNOS、15-LOおよびsEHのタンパク発現量をL-control群とEtOH群で比較したところ、eNOSの発現量は両群間に差はなく、15-LOの発現量はEtOH群で有意に増大し、sEHの発現量については有意な差は見られなかったもののEtOH群で増大傾向を示した。 これらの結果から、EtOH群における上腸間膜動脈の血管内皮細胞由来弛緩反応の増大には、NOの経路ではなく、iEDHFの経路が関与していることが明らかとなった。
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