入浴中の急死例と、コントロール例の間で、心臓の左静脈のHE染色標本を作製し、抗Tyrosine hydroxylase抗体と抗S-100抗体を用いて免疫組織化学的検討を施行。TH陽性/S-100陽性はアドレナリン作動性線維、TH陰性/S-100陽性は非アドレナリン作動性線維と判断し、4本の肺静脈領域のTH陽性/S-100陽性およびTH陰性/S-100陽性の神経束の数を対物レンズ10倍で20視野鏡検して計測し、半定量化した。コントロール例は、20~90歳代であり、年代によって、TH陽性/S-100陽性およびTH陰性/S-100陽性の神経束数に統計学的な有意差は認めなかった。入浴中の急死例の心臓の加齢性変化につき、コントロール例との比較を行った。心臓の病理組織標本を用いて、心臓弁の石灰化、小血管周囲の線維化、心筋細胞へのリポフスチンの沈着、心筋細胞のBasophilic degeneration、アミロイド沈着の有無について調査を行った。コントロール例は、20歳代~90歳代の心臓疾患を有しない剖検例を選び、年代別に調査を行った。リポフスチンは50歳代より認められ、高齢者では全例に認められた。Basophilic degenerationは60歳代以上の半数以上に認められた。心筋の核の大小不同、血管周囲の線維化は、50歳代以上の70-80%程度に認められた。入浴中の急死例の心臓の組織所見では、コントロール例の心臓の所見と比較して、加齢性の変化に顕著な相違は認めなかった。70歳以上の高齢者の心臓には、心筋の核の大小不同、血管周囲の線維化、心筋内のリポフスチン沈着およびbasophilic degeneration 等は高齢になるに従い発現頻度が高くなっていた。大動脈弁石灰化、心肥大は心機能の低下、血圧変動に関与しており、心臓の加齢性変化が、入浴中の急死に関与していると考えられた。
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