研究実績の概要 |
29年度はDNAのメチル化を指標とした年齢推定の検証実験を行った.ターゲット遺伝子は,これまでにメチル化率と年齢の相関がみられるとの報告されている,C1orf132, CCDC102B, ELOVL2, FHL2, SLC6A4, TRIM59の6遺伝子である.剖検で得られた0歳から86歳までの計46例から採取された血液を試料とした.その詳しい内訳は,0~40歳までが11例,40歳代~80歳代までの各年代から7例ずつである.まず,DNAのバイサルファイト処理を行い,処理後のゲノムの目的遺伝子領域をPCRで増幅した.精製後,ライブラリの構築および,テンプレートの調整を行った.シークエンスランはIon 318 Chipを用い,Ion PGM Systemにて行った.CpGサイトの解析は,Plug-inとしてMethylationAnalysis_Ampliconを用いて,付属のIon Torrent Suite softwareにて行った.得られたメチル化情報から各遺伝子におけるメチル化率を算出し,それと年齢情報をXLSTATソフトウェアにより重回帰分析を行った. 分析の結果,各遺伝子内に存在するCpGサイトのメチル化率は0.072~0.890を示し,遺伝子としてのメチル化率は0.374(FHL2)~0.553(C1orf132)の範囲であった.重回帰分析の結果,FHL2,SLC6A4, TRIM59の3遺伝子は年齢との相関が乏しいため除き,C1orf132, CCDC102B, ELOVL2の3遺伝子のメチル化率を用いたところR2は0.793となった.これらからメチル化率と年齢の推定式, 推定年齢=54.3-52.46×(C1orf132)-34.8×(CCDC102B)+91.7(ELOVL2) が導き出された.また,実年齢と推定年齢の誤差は,-28歳から+20歳を示した.
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今後の研究の推進方策 |
DNAメチル化を指標とした年齢推定の精度を上げるために,新たに5つの遺伝子,KLF14, F5, ASPA, CCDC102B, PDE4CのCpGサイトを対象として解析を行うこととする.また,動物実験によるメチル化を指標としたストレスマーカーの探索も年齢推定の実証実験に引き続き行う.我々が所持している次世代シークエンサーよりもより高出力なものが必要となるため,メーカーに外注とするか,他施設のものを使用させてもらうかは今後の検討課題ではある.しかしながら,動物実験を行い,試料を採取しておくことは可能であることから,試料からゲノムDNAを抽出し,バイサルファイト処理を行い,メチル化されているシトシンはそのままに,されていないシトシンをチミンに変換させるところまでは実験を進めておく.
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