本年度は、これまでに同定した、血液及び唾液特異的SNPタイピングの候補領域各3か所について、さらに検証を進めた。体液特異的ジェノタイピングを行う上で、インプリンティング遺伝子で見られるように、各領域のメチル化状態が2本の相同染色体間で大きく異なる場合、メチル化状態を指標としたSNPタイピングが不可能となる。そこで、計6か所の候補領域に存在するSNPがヘテロ型となる血液及び唾液試料を用いて、NGSによるバイサルファイトシークエンス解析を行った。さらに、SNPのアレルごとにメチル化率を算出し、同一個体における相同染色体間のメチル化状態の差を解析した。その結果、各領域について、相同染色体間でいずれも平均5%程度のメチル化率の差となり、体液特異的ジェノタイピングに用いる上で問題のないものと考えられた。続いて、血液及び精液DNAの1:1の混合試料ならびに唾液及び膣液DNAの1:1の混合試料を作製し、血液-精液混合DNAについては、血液特異的SNPタイピング用の3領域、唾液-膣液混合DNAについては、唾液特異的SNPタイピング用の3領域について、NGSによるバイサルファイトシークエンスを行った。さらに、血液あるいは唾液特異的なメチル化状態を示したリードのみSNPアリルを解析したところ、いずれの領域についても、血液及び唾液由来のSNPタイプが推定可能であった。以上の結果から、これらの領域を用いることで、混合体液試料からの血液及び唾液特異的SNPタイピングが可能であることが示唆された。しかしながら、昨年度までの結果から、血液あるいは唾液以外の一部の体液種サンプルにおいてわずかにメチル化が見られること、血液や唾液においても比較的低メチル化率を示すサンプルが見られたことなどから、実際の混合比率未知の資料への適用に際しては、さらなる検討が必要であるものと考えられる。
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