【最終年度の研究成果】有機リン系農薬(フェニトロチオン、マラチオン、ジクロルボスおよびダイアジノン)の測定パラメータを最適化し、血液試料への添加回収実験を行った。有機リン系農薬を血液に添加し、QuEChERS法(硫酸マグネシウム/酢酸ナトリウム粉末とアセトニトリル使用)にて前処理した。いずれの農薬も0.1-5 μg/mLの範囲で直線性が得られ、血液からの回収率(添加濃度各0.1μg/mL)はフェニトロチオン77%、マラチオン67%、ジクロルボス91%およびダイアジノン96%であった。本法を用いて法医解剖事例からフェニトロチオン(LC-MSによる定量検査結果として血中濃度0.1 μg/mL)を検知することができた。 【全体の研究成果】逆流型大気圧化学イオン化質量分析技術を利用し、揮発性毒物を含む薬毒物を対象とした迅速、簡便、高精度な一斉検査システムを開発することを目的とした。アルカリ水溶液中のシアンイオンおよびアジ化物イオンは負イオン測定モードで検出可能であったが、中毒レベルのヒト生体試料を測定するための高感度化が要求された。各種誘導体化処理を行ったが、感度向上は得られなかった。 合成カンナビノイドおよび合成カチノンについては、それぞれ特徴的なイオンの質量数および強度をデータベース化することで物質同定が可能であった。 農薬については、LC-MSによる迅速測定法を確立し、血液・尿からの回収率やマトリクス効果の評価実験に利用した。直接導入型質量分析計による測定には血液試料の前処理にQuEChERS法を採用した。基礎実験をもとに実試料への適用を試みたところ、解剖事例の血液試料からフェニトロチオンを検知することができた。以上、揮発性薬毒物を対象とした迅速、簡便、高精度な一斉検査システムを開発するための要素技術を確立することができた。
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