研究課題/領域番号 |
17K09288
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊地 章子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00400325)
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研究分担者 |
山谷 睦雄 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60261640)
高山 真 東北大学, 大学病院, 准教授 (80579954)
沼田 健裕 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20748678)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 漢方薬 / 急性気道感染症 / ヒト気道上皮細胞 / インフルエンザウイルス / ライノウイルス |
研究実績の概要 |
研究目的:漢方薬は日本の伝統医学で、古来より急性感染症に多く使用されてきた。しかしヒトの体内での薬物動態や作用機序に関する研究はいまだ不十分である。近年の臨床研究において、急性ウイルス性上気道炎に対する漢方薬の有効性が報告され、また動物実験や癌細胞由来の培養細胞株を用いた研究は数多く行われているが、正常ヒト気道上皮細胞を用いた漢方薬に関する実験はほとんど行われていない。本研究の目的は、培養ヒト気道上皮細胞を用いて、急性ウイルス性上気道炎に関わる漢方薬の作用機序を解明することである。方法:1)漢方薬のウイルス放出抑制効果に関する検討:培養ヒト気道上皮細胞にライノウイルス(またはインフルエンザウイルス)を感染させ、それぞれの培養液の上清を採取しウイルス放出量の継時的変化を測定する。容量依存性を検索するため、漢方薬溶液濃度の希釈率を変えてウイルス放出量の変化を検討する。結果: 1)ヒト気管上皮細胞またはヒト鼻ポリープ粘膜上皮細胞にライノウイルスを感染させ、漢方薬溶液を作用させてウイルス放出量を確認したが明らかな抑制効果は得られなかった。また培養上清中サイトカイン(IL6,IL8)を測定したが漢方薬の作用によりIL8が低下する傾向が認められた。2)ヒト気管上皮細胞またはヒト鼻ポリープ粘膜上皮細胞にインフルエンザウイルスを感染させ、漢方薬溶液を添加してウイルス放出量の変化をみたが、明らかな抑制効果は得られなかった。培養上清中サイトカイン(IL6,IL8)の測定ではIL8で低下する傾向が認められた。3)漢方薬溶液の実験に用いた濃度においてヒト気道上皮細胞に細胞障害性のないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究計画のうち、培養ヒト気道上皮細胞にライノウイルス(またはインフルエンザウイルス)を感染させて漢方薬を作用させウイルス放出量の継時的変化をみること、漢方薬溶液濃度の希釈率を変えてウイルス放出量の変化を検討すること、上清中の炎症性サイトカイン(IL-6,IL-8)の測定までは達成できた。しかし、ウイルスRNA量の比較、ICAM-1のmRNAの発現量を検討、上清中の可溶性ICAM-1の濃度測定、酸性エンドソームの蛍光強度測定は施行できなかった。これは当初の予想より漢方薬の作用によるウイルス増殖抑制効果がはっきり現れなかったため、実験計画を修正して繰り返しウイルス感染実験を行っていたためである。
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今後の研究の推進方策 |
漢方薬の濃度設定、使用する漢方薬の種類、作用させる方法など実験計画を改めて見直し漢方薬の抗ウイルス効果の有無を解明していく。また漢方薬の抗炎症効果を検討するため他の炎症性サイトカインの測定も進める。またウイルスRNA量の測定、炎症に関わる蛋白の活性化に対する影響も検討し、その他の研究計画内容も順次施行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を進めていく課程で炎症に関わる蛋白質を測定する必要が生じたが、その試薬が高額のため本年度の残額では不足する可能性があった。よってその試薬の購入を次年度に延期することとした。その分他の実験用品の購入にあてる余裕が生じたため次年度使用額が生じたが、次年度の助成金と合わせて今後も実験用品に資金が必要である。また実験結果が出た場合その成果の発表・論文作成にも使用する予定である。
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