研究課題/領域番号 |
17K09292
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
河村 治清 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (70527902)
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研究分担者 |
竹本 稔 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (60447307)
前澤 善朗 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80436443)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウェルナー症候群 / WRN遺伝子 / 皮膚潰瘍 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
外来通院中のウェルナー症候群患者リクルートを行い、現在までに40~60歳代の5名のウェルナー症候群患者(男性3名、女性2名)から血球を採取し、CD34陽性細胞を単離した後、センダイウイルスにてKLF4, OCT4, SOX2, c-MYC遺伝子の導入を行ない、iPS細胞株の樹立に成功した。これらiPS細胞においてはNANOGなどの多能性遺伝子の発現が確認されており、現在これらのコロニーを拡大している。さらに樹立したiPS細胞の形質解析に使用するべく、筋細胞をiPS細胞から分化誘導する実験系を検討中である。 また、以前にレトロウイルスを用いて樹立したウェルナー症候群患者由来iPS細胞株を用い、マイクロアレイを用いた包括的遺伝子発現解析を行った。今までに、患者由来iPS細胞の遺伝子発現プロファイルは、既報のES細胞にWRN遺伝子変異を導入した細胞のプロファイルと大きく異なる事が判明し、これらの実験系が同等ではない事が判明している。また、いくつかの興味深い遺伝子発現に変化が見られることがわかり、現在これらの解析を行っている。 また、筋細胞へ分化を試みる一方で、ウェルナー症候群患者は皮膚潰瘍、肉腫などに悩まされ、間葉系の異常が想定されるため、iPS細胞を間葉系幹細胞に分化誘導した。すると、一部のウェルナーiPS細胞由来間葉系幹細胞は早期に増殖が低下し、核の膨化も見られ細胞老化を呈していると考えられたが、一方、一系統はかえって増殖が亢進した。 この細胞ではTP53の変異を生じていることがわかり、患者由来iPSによりウェルナー症候群の老化や癌化などの表現型を再現できたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くのウェルナー症候群患者からiPS細胞を樹立することができたため
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今後の研究の推進方策 |
今後、樹立したiPS細胞を筋細胞に分化させる系を確立する。さらに、筋分化を行なった際の遺伝子発現プロファイルを検討し、筋関連遺伝子ローカスのエピジェネティックな変化についても検討する。また、ウェルナー症候群患者から同意を頂けた場合、骨格筋サンプルにおける PI3K、Akt の発現、リン酸化、ユビキチン-プロテアソーム経路のAtrogin-1、MuRF1 の発現、オートファジー経路の代表的構成物質である microtubule associated protein light chain 3 の発現、骨格筋再生機能に関与する Notch 分子シグナルのリガンドであるDelta の発現量や細胞老化に関与する p38MAPK の発現、リン酸化、p16 の発現を、組織学的(免疫染色)、遺伝 子(real-time PCR)、タンパクレベル(ウェスタンブロット) にて検討していく。
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