研究課題
超高齢社会を迎える本邦において、高齢者の生活の質をいかに保持し、健康長寿を達成するかは重要な課題である。高齢者の身体機能の低下と密接に関連する因子として、サルコペニアが挙げられる。本研究においては、ヒト老化のモデル病態であるウェルナー症候群患者の検体あるいは患者由来iPS細胞を用いて、老化に伴う筋肉の量と質の低下のメカニズムについて探索している。まず、ウェルナー症候群患者をリクルートし、8人の患者からiPS細胞の樹立に成功した。これらのiPS細胞は未分化形質を有しており、正常なリプログラミングができたと考えられた。さらに、iPS細胞から筋肉への分化を行なっている。また、筋肉に至る前段階での異常を検討するために、iPS細胞から間葉系幹細胞への分化を行ったところ、老化マーカーの発現の増加や、細胞増殖の遅延が認められ、早期に細胞老化をきたしていると考えられた。また、これらの遺伝子発現プロファイルを検討したところ、細胞増殖やDNA複製など、多くの老化に関連するgene ontology termが得られた。また、ウェルナー症候群の原因遺伝子であるWrnの欠損マウスはヒトと異なり表現型を有さないが、同じRecQヘリカーゼファミリーの一つであるRecql5ノックアウトとの交配を行ったところ、ダブルノックアウトマウスは野生型と比較して体重が増えやすく、耐糖能に異常を生じていた。すなわち加齢に伴っておこるメタボリックシンドロームのモデルと考えられた。このような研究から、健常者の老化と早老症に共通する、サルコペニア分子機序の解明を目指している。
2: おおむね順調に進展している
iPS細胞の樹立は順調で、また、筋肉への分化までは至っていないものの、中間段階である間葉系幹細胞への分化にについては成功し、表現型も観察されているため。
今後、iPS細胞から筋肉への分化系の確立を、これを用いたウェルナー細胞と野生型の相違について、検討していく
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件)
J Am Soc Nephrol
巻: 29 ページ: 2795-2808
10.1681/ASN.2017121278
J Diabetes Investig
巻: 10 ページ: 224-226
10.1111/jdi.12951
Mol Syndromol
巻: 9 ページ: 214-218
10.1159/000489055
J Clin Lipidol
巻: 12 ページ: 888-897
10.1016/j.jacl.2018.05.002
Mech Ageing Dev
巻: 173 ページ: 80-83
10.1016/j.mad.2018.05.002
Lipids Health Dis
巻: 17 ページ: 51
10.1186/s12944-018-0706-8
Sci Rep
巻: 8 ページ: 245
10.1038/s41598-017-18647-6
巻: 9 ページ: 69-74
10.1111/jdi.12676