研究課題
Werner症候群は白髪禿頭、皮膚萎縮、両側白内障などの老化徴候を30歳台より発症、40歳台より糖尿病、動脈硬化、悪性腫瘍などをきたす遺伝性早老症である。Werner症候群における耐糖能異常や動脈硬化の背景には内臓脂肪蓄積とメタボリックシンドロームの関与が報告されているが、一方で、患者は四肢の強い萎縮を呈し高頻度にサルコペニアを来たしており、これが本症候群における耐糖能異常や動脈硬化を促進させている可能性がある。そこで本研究においては、Werner症候群におけるサルコペニアの機序を、疾患特異的iPS細胞を用いて明らかにすることを目的とした。まず、当院に入院したWerner症候群患者において、筋肉量や、グルコースクランプ法によるインスリン抵抗性を検討したところ、検索した4例全例において骨格筋指数が基準よりも低値であり、またグルコース注入率も低値であり、強いサルコペニアならびにインスリン抵抗性を有していた。さらに、7症例のWerner症候群患者から同意を得て血液を採取し、センダイウイルスにて山中4因子を導入、Werner症候群疾患特異的iPS細胞株を樹立した。加えて、サルコペニアの機序解明を目的として、その前段階である間葉系幹細胞への細胞分化を行い、機能解析を行った。するとWerner症候群疾患特異的iPS細胞から誘導した間葉系幹細胞(WS-MSC)は、増殖能の低下、テロメアの短縮、p16などの老化マーカーの発現上昇を来たしており、細胞老化を呈していると考えられた。以上の結果から、Werner症候群疾患特異的iPS細胞は、体細胞に分化させると細胞老化を呈し、本疾患の老化徴候をよく再現していると考えられた。このツールを使用し、さらに筋細胞の分化について検討する予定である。
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