研究課題
アドレノメデュリン(AM)は、多彩な生理活性を有するペプチド因子である。AMとそのファミリー因子の受容体であるCLRには、RAMPという1回膜貫通型タンパクが結合することで、多彩な生理活性が生み出されると考えられている。我々はこれまでAM-RAMP系の心血管系恒常性維持作用を明らかとしてきた。一方、AMとRAMPは共に、脂肪組織をはじめとした代謝系においても高発現が認められるが、その意義の多くは不明である。本研究では、メスマウスを用いて卵巣摘出による閉経モデルを作成し、閉経後代謝障害におけるAM-RAMP系の病態生理学的意義を検討した。RAMP サブアイソフォームの内、RAMP2のヘテロノックアウトマウスメスに対して卵巣摘出と高脂肪食負荷を行なった場合は、野生型マウスと比べて、体重、内臓脂肪重量、肝障害、酸素消費量などには大きな差を認めなかった。一方、RAMP3のホモノックアウトマウス(RAMP3-/-)メスに対して卵巣摘出と高脂肪食負荷を行なったところ、野生型マウスと比べて体重増加、酸素消費量の低下、耐糖能異常、内臓脂肪重量の増加、脂肪肝の増悪を認めた。RAMP3-/-では、内臓脂肪における脂肪分解系因子の発現の低下、炎症関連遺伝子および酸化ストレス関連因子の発現亢進を認めた。以上の結果から、閉経後代謝障害における病態生理学的意義の寄与度には、RAMP2、3の両者に差異が存在する可能性が考えられた。RAMP3は、CLR以外にもエストロゲンの膜型受容体であるGPR30に結合することが報告されていることから、エストロゲン-エストロゲン受容体系とAM-RAMP系のクロストークが予想される。
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