研究実績の概要 |
高グルコース誘導内皮細胞老化がNO 産生低下を介し動脈硬化を発症させる可能性を認め、高血圧や脂質異常症刺激と比較してきた。インスリン、肝X 受容体やCa 拮抗剤等に老化抑制作用を認め、1,2型糖尿病モデルラットにて確認した。さらに糖尿病コホート研究9年間の成果よりHDL-C 等を生体下で検討し細胞老化抑制の血糖,血圧,脂質への作用と高齢者の各種血管性疾患及び糖尿病合併症(細小血管症,大血管動脈硬化症,骨粗鬆症,認知症等)への作用を細胞/組織/動物にて研究しsurrogate marker にてヒトの知見も得ることを目標とした。1.抗動脈硬化作用と抗老化作用の関連の証明-主として糖尿病モデルの検討(林,研究分担者: 葛谷教授,伊奈助教,当科博士取得研究員2名,海外研究協力者Ignarro LJ 教授)。①動脈硬化症は発症期,初期,進展期と異なり細胞老化を介し各段階で血管壁代謝,組織学的変化もたらす。糖尿病ラットとして1型糖尿病(STZ ラット,高血糖の影響主体), 2 型糖尿病(OLETF ラット,高血糖かつ内皮機能低下顕著), 脂質異常症随伴2 型糖尿病ラット(ZDF ラット、高血糖+脂質異常症,血管病変:内皮肥厚,脂肪線状あり)を用い,病期毎の各物質の作用と老化との関連を検討する。細胞老化はreplicative/stress induced senescence 双方を検討し内皮はNO 及び活性酸素等に着目した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)高グルコース誘導内皮細胞老化が動脈硬化を発症させる可能性及び2)高血圧や脂質異常症刺激との比較、3)インスリン、肝X 受容体やCa 拮抗剤等の老化抑制作用については追試も含め確認された。糖尿病コホート研究9年間の成果よりHDL-C 等を生体下で検討し細胞老化抑制の血糖,血圧,脂質への作用と高齢者の各種血管性疾患及び糖尿病合併症(細小血管症,大血管動脈硬化症,骨粗鬆症,認知症等)への作用を細胞/組織/動物にて研究するとの目標についてはも順調に検討が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は概ね当初計画通り、1. 加齢動物モデルでの抗動脈硬化作用と抗老化作用の関連の証明。①動脈硬化発症期,初期,進展期の各期の細胞老化と血管壁内分泌代謝,組織学的変化の関連の検討を予定する。加齢ラットとしてWister 系、24 ヶ月例ラット1,2 型糖尿病 ( OLETF ラット、高血糖+高度内皮機能低下), 脂質異常症随伴2 型糖尿病ラット ( ZDF ラット)にて各物質の作用と老化制御との関連を検討する。②上記における内皮,平滑筋,マクロファージ各細胞老化をtelomerase, Sir2, Insulin, NO 合成酸素、NADPHoxidase, p53 等老化関連分子の酵素活性及び遺伝子レベルの変動と,血管壁全体の抗老化療法による動物動脈硬化抑制,退縮との関連をみる。 ③糖尿病は血圧等の日内変動をなくす事を報告しており,当科研究員の日内変動論文(Niwa et al.PNAS2013)も参考にin vitro, in vivo の内皮細胞老化の日内変動との差を各種関連蛋白Per2 等(予備実験にて高血糖下でリズム消失を確認)にて検討する。 ⑤動脈硬化症等の評価-大血管合併症は従来同様,大動脈を中心に検討、細血管症は腎臓を用いる。免疫組織学的評価を中心に、尿中蛋白量等も加え機能評価も合わせて施行する。認知症は水迷路実験での検討と共に組織学的検討を試みる.加えて上記各部位の血中NO 代謝物濃度,replicative/stress induced senescence 双方を検討する。 2 . 上記に対しこれ迄に見出したinsulin, LXR に加えHDL-C 等の影響を検討する。
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