研究課題/領域番号 |
17K09299
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬場 孝輔 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (90750159)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 牛車腎気丸 / パーキンソン病 / 神経炎症 / 実験的自己免疫性脊髄炎モデル / 漢方 |
研究実績の概要 |
牛車腎気丸(GJG)の中枢神経系での抗炎症作用、神経保護作用の可能性について薬剤性パーキンソン病モデルマウスおよび実験的自己免疫性脊髄炎モデルマウスを用いて検討した。GJG含有食餌群と通常食餌群の2群のC57BL6JマウスへのMPTP投与による薬剤性パーキンソン病モデルでGJGの抗炎症作用、神経保護効果の検討を行った。MPTPの投与は炎症性変化が主体のacute modelを用いた。MPTP投与1か月前からGJG含有食餌を先行させた。その結果、Iba1陽性細胞(ミクログリア)の浸潤抑制を認めた。先行投与期間を3か月に伸ばした群で比較するとIba1陽性細胞の浸潤をほぼ完全に抑制した。この結果よりGJGの長期投与にて炎症反応機構の抑制が誘導されることが示唆された。また、このGJGの炎症抑制効果について実験的自己免疫性脊髄炎モデルを用いても検討を行った。その結果、GJG投与群の実験的自己免疫性脊髄炎モデルマウスではコンロール群と比して四肢の運動麻痺の程度を比較するclinical scoreで改善を認めた。病理解析ではGJG投与群は脱髄病変の減少、明らかなIba1陽性細胞(ミクログリア)の浸潤抑制を認めた。また、病理解析及び生化学的解析にてGJG投与群でTNFαの発現量低下を確認した。このことからGJGはTNFα産生抑制を介して抗炎症作用を呈する可能性が示唆された。これら実験的自己免疫性脊髄炎モデルに関する結果をXXIII World Congress of Neurology (WCN 2017)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPTP投与による薬剤性パーキンソン病モデルマウスでGJGの抗炎症作用、神経保護効果を検討した。特にGJGの長期投与の検討を行った結果、1か月投与と比して3か月投与でMPTPに対する炎症反応抑制効果が明らかに増強された。現在、再現性を確認している。その為、実験的自己免疫性脊髄炎モデルでも抗炎症作用、神経保護作用を検討を行った結果、GJG投与群で運動機能悪化の改善、病理学的解析及び生化学的解析にてIba1陽性細胞(ミクログリア)の浸潤抑制、TNFαの発現抑制を確認した。実験的自己免疫性脊髄炎モデルの結果に関して国際学会で発表し、現在、追加実験を行い論文作成中である。このGJGのミクログリアへの影響に関しては6-3 microglia cell lineを用いたin vitro実験系を立ち上げて解析を開始している。また、GJG投与による脳内遺伝子発現の網羅的解析に関する実験も先行して開始しており、平成29年度の進捗状況は良好であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤性パーキンソン病モデルに関してはGJGの長期投与による抗炎症作用、神経保護効果について再現性を確認しその作用機序の解明を目指す。また、実験的自己免疫性脊髄炎モデルに関してはGJGの発症後投与に関する実験、6-3 microglia cell lineを用いたin vitro実験系を用いた解析を行い論文化する予定である。GJG投与マウス脳のDNA microarrayを用いた網羅的な遺伝子発現解析も継続し、GJGの中枢神経系での作用機序の分子レベルでの解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAマイクロアレイ解析をマウスのサンプルリングの関係で平成29年度は当初予定より実施回数が1回分少なかったため、残額が生じた。平成30年4月時点でサンプリングは出来ており、29年度に施行予定分あったDNAマイクロアレイ解析は今年度に施行する。
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