研究課題/領域番号 |
17K09301
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
木村 善行 愛媛大学, 医学系研究科, 研究員 (20294796)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌 / 伝統薬物成分 / 薬理学 / 生理活性 / 生体分子 |
研究実績の概要 |
1)候補化合物の選定(In vitro):伝統薬物成分をマウス大腸癌細胞を用い、癌浸潤や転移に関わるMatrix Metalloproteinase (MMP)-9発現化合物群として、スチルベン類やカルコン類を見出した。 2)候補化合物の大腸発癌と抗腫瘍効果(In vivo):大腸発癌マウスはAzoxymethane(AOM)(10 mg/kg)腹腔内投与し、1.5% Dextran Sulfate Sodium (DSS)を4日間自由摂飲させ、14日間休止し、このサイクルを3回繰り返し、大腸発癌モデルを構築する。その実験系に1)の項で選定した化合物4種類のStilbene類の大腸癌の抗腫瘍効果や大腸組織や血液中のサイトカイン類を測定した。 3)Stilbene類化合物の大腸癌に対する抗腫瘍効果:合成した2,3-および4,4'-Dihydroxy-stilbeneは、5㎎/㎏および12.5mg/㎏投与において、有意に抗腫瘍効果が認められ、大腸組織のIL-1βおよびMCP-1発現および血中MCP-1発現を有意に抑制した。これらの事実から大腸発癌や腫瘍組織の増殖は、腫瘍内に浸潤した白血球やマクロファージからのIL-1βやMCP-1発現抑制を介したものであると考える。他の2種類のStilbene類、3,4-DihydroxystilbeneおよPiceatannolは現在実験中である。 4)DSS誘発大腸炎での評価:大腸発癌実験モデルは長期間の実験期間が必要であることから、1週間で評価できるDSS誘発大腸炎モデルを構築し、伝統薬物、漢方方剤やその伝統薬物中の単離成分のDSS誘発大腸炎に対する効果を検討した結果、アカメガシワおよびその成分Bergeniin、桂枝加芍薬湯、カルコン類Xanthangelolに大腸炎を抑制し、大腸組織中のTNF-α産生や白血球浸潤抑制することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)AOM+DSS誘発大腸発癌モデル実験:長期間の実験で、実験途中での死亡が起こり、統計処理するための数例に達せず、再度実験を行うことになり、実験の進捗が若干遅れている。
2)大腸組織の免疫染色:大腸組織の免疫染色が遅れている。この結果によって、大腸発癌抑制や抗腫瘍効果の作用が一層明確になると考える。
3)In Vivo実験のサンプル量の確保:評価するサンプル量が多くなり、量の確保のため、伝統薬物成分からの単離や合成に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
1)DSS誘発大腸炎(1週間)モデルを用い、伝統薬物やその成分を評価し、長期実験のAOM+DSS誘発大腸発癌モデルに使用する化合物を選定する。
2)腫瘍組織中のPD-L1発現を測定し、癌免疫逃避機構との関連を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1) 2017年度に使用する予定の試薬類やELISA測定キット類の購入が2018年度になり、2018年度に実験使用した。その結果、2018年度の実験使用額が繰り越す結果となった。
2) 2019年度には、2018年度に実施予定の実験計画の残り、例えば、大腸組織の病理免疫色等の実験計画を速やかに実施する予定である。
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