研究課題/領域番号 |
17K09302
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大八木 保政 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (30301336)
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研究分担者 |
山口 浩雄 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00701830)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 糖尿病 / アミロイドβ蛋白 / 培養細胞 / インスリンシグナリング |
研究実績の概要 |
【アルツハイマー病特異的なインスリンシグナリング障害モデルの構築】 アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)は高齢者認知症の約60%を占める最大の原因疾患である。ADにおける認知障害の機序として、AD脳に過剰に蓄積するアミロイドβ蛋白(Aβ)による神経毒性が考えられているが、これまでの臨床治験では、抗Aβ抗体治療によりAD患者脳内のAβが減少してもあきらかな認知機能の回復効果が得られていない。したがって、Aβ毒性による神経細胞の代謝異常を回復させる必要があり、私たちは糖尿病的機序による神経細胞のインスリンシグナリング障害がエネルギー代謝障害の主因と考えている。 マウス神経細胞由来のNeuro2a (N2a)は、インスリン刺激による細胞内のインスリンシグナリングの解析によく使われる培養細胞系である。私たちは、インスリンシグナリングカスケードの関連分子であるリン酸化Akt (p-Akt)、リン酸化mTOR (p-mTOR)をウェスタンブロットで定量的に解析するシステムを構築した。本細胞系において、合成Aβ40及びAβ42ペプチドを各濃度で培地に添加したところ、Aβ42処理でp-Akt発現量が抑制され、インスリンシグナリングが阻害されることを確認した。この現象はAβ40処理では見られなかった。 Aβ42、特にそのオリゴマーはAD脳の分子病態に深く関わっていると考えられるため、本実験系はAD脳におけるインスリンシグナリング障害を反映していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インスリンシグナリングの解析システムを構築でき、現在は各種薬剤作用の定量的解析を進めているところである。培養細胞系の実験データは、平成30年度中にある程度得られる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞におけるインスリンシグナリング障害を標的としたアポモルフィン、インスリン、各種糖尿病治療薬(特にインクレチン薬など)の有効性の比較は現在進行中であり、それらの併用による効果上昇なども比較検討する予定である。さらにその結果を踏まえて、ADマウスモデルにおける複合治療の効果のin vivo解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究内容が主に実験システム系の構築であったため、研究対象となる薬剤類の購入が予定よりも少なかったことによる次年度への持ち越しである。そのため、次年度は試薬購入費が当初予定よりも増加する可能性がある。
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