研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)モデル3xTg-ADマウス6ヶ月齢に対して、インスリン分泌低下を誘導するstreptozotocin (STZ)連続5日間注射群、インスリン抵抗性が上昇する高フルクトース食(HFuD)で3ヶ月間飼育群、および各対照群を各n=12で作成した。STZ注射3ヶ月後の3xTg-ADマウスでは記憶障害が悪化し、さらに脳内では毒性ターン構造Aβ42の形成が促進されていた。免疫染色で、神経細胞内でリン酸化タウ蛋白オリゴマーと毒性ターン構造Aβ42の共凝集が見られ(Imamura et al, Neurobiol Dis, 2020)、この機序の抑制がADの治療戦略として重要であると考えられた。 一方、HFuD飼育群では、STZ群同様に毒性ターン構造Aβ42形成やタウ蛋白リン酸化が促進されているにもかかわらず、認知機能は不変もしくは改善傾向であった。神経細胞におけるフルクトースによるエネルギー産生はインスリンとは別のAMPK経路が考えられる(Yanagihara et al, 投稿中, 2020)。
マウス神経芽細胞腫Neuro-2aにおいて、リン酸化されたAktやGSK-3βのウェスタンブロットにより、Aβ42ペプチド処理でインスリンシグナリングが抑制されることを証明した。また、神経細胞のインスリン抵抗性を改善するAPO (Nakamura et al, J Alzheimers Dis, 2017)がAβ42によるインスリンシグナリング低下を抑制することを見出し、さらに高精度のTR-FRET法でリン酸化Aktの定量解析を行い、ウェスタンブロットの結果を再確認した。しかし一方、APOはインスリンシグナリング特異的ではなくリン酸化Akt経路自体を活性化する可能性もあり、APOと他のDM治療薬の併用による相乗的効果を引き続き検討中である。
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