研究課題/領域番号 |
17K09303
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
清水 孝洋 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (00363276)
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研究分担者 |
齊藤 源顕 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (60273893)
東 洋一郎 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (80380062)
清水 翔吾 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (90721853)
中村 久美子 高知大学, 設備サポート戦略室, 技術専門職員 (30398052) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ストレス / 頻尿 / 心因性頻尿 / 脳 / ボンベシン / CB受容体 / ニコチン受容体 / 硫化水素 |
研究実績の概要 |
ストレス曝露による頻尿誘発、膀胱機能障害における頻尿症状がストレス曝露により増悪する事が古くから報告されている一方、その機序についてストレスを受容する脳との関連で明らかにした報告は少ない。代表者らは以前、ストレス反応誘発に関与する神経ペプチドのボンベシン(BB)が脳内で頻尿誘発に関与する事を明らかにした。また本研究課題遂行により、BB誘発性頻尿に脳内セロトニン神経系およびコルチコトロピン放出因子(CRF)が関与する事、脳内一酸化窒素(NO)が脳内NMDA型グルタミン酸受容体を介して頻尿を誘発する事、及び脳内ニコチン受容体(nAChR)刺激が排尿を抑制する事、をそれぞれ明らかにしてきた。本年度は、(1)BB誘発性頻尿における脳内カンナビノイド(CB)受容体の役割、(2)排尿抑制に関与する脳内nAChRサブタイプの同定、(3)脳内硫化水素(H2S)が排尿機能に及ぼす影響、について解析した。 実験にはウレタン麻酔下雄性ラットを用い、側脳室へ種々の薬物を脳室内投与後、膀胱内圧測定により排尿機能を評価した。 (1)BB脳室内投与による頻尿誘発はCB1受容体遮断薬の脳室内前処置により増強された。(2)nAChR刺激薬エピバチジン脳室内投与による排尿抑制はα7型nAChR遮断薬の脳室内前処置により抑制された。(3)H2SドナーGYY4137脳室内投与は排尿間隔を有意に延長させ、H2S合成酵素阻害薬AOAA脳室内投与は排尿間隔を有意に短縮させた。 以上から、(1)脳内BBによる頻尿誘発に対し脳内CB1受容体が抑制性に関与する事、(2)脳内α7型nAChRが排尿抑制に関与する事、(3)脳内H2Sが排尿抑制に関与する事、が明らかとなった。よって、脳内CB1受容体、α7型nAChR及びH2Sがストレス曝露による頻尿誘発・膀胱機能障害における頻尿症状増悪に対する新規治療標的となる事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、脳内BBによる頻尿誘発に対し脳内CB1受容体が抑制性に関与する事を明らかにできた。加えて、当初の計画には加えていなかった、脳内NO、脳内nAChR及び脳内H2Sに着目した検討も順調に進み、興味深い知見を得ている。この様に、ストレス誘発性頻尿に関与する可能性を有する複数の脳内分子が着実に同定されつつある。一方、ストレス誘発性頻尿のモデル動物を用いた検討については、モデル作成の条件検討にようやく目処がつき始めた段階であり、同モデルを用いた検討は次年度以降の課題である。 以上、予想以上の進展を見せている部分と進行に難渋している部分を踏まえ、上記の様に判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)脳内BBによる頻尿誘発における脳内CRF及びCB1受容体との関連を示す研究成果を論文として公表する。(2)脳内NOによる頻尿誘発の脳内機序に関する研究成果を論文として公表する。(3)脳内nAChRを介した排尿抑制機構をGABA受容体との関連で明らかにし、本成果を論文として公表する。(4)脳内H2Sを介した排尿抑制機構をGABA受容体との関連で明らかにし、本成果を論文として公表する。(5)ストレス誘発性頻尿モデル動物の作成条件を確定させ、同モデル動物の脳サンプルにおけるBB含量の変動を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の成果を発表する予定であった学会(第93回日本薬理学会年会、日本薬学会第140年会、いずれも2020年3月開催 予定であった)が新型コロナウイルス感染症蔓延の影響で開催中止となり、同学会参加のための旅費を2019年度内に執行できなくなった。この旅費は2020年度開催予定の学会(第30回医療薬学会年会、第27回日本排尿機能学会)における成果発表のための旅費に充てる予定である。
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