研究課題
10週齢の野生型マウス(C57BL/6)に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(2mg/kg/day)或いはアンギオテンシンⅡ(AngⅡ)(2mg/kg/day)を2週間皮下投与した。その後、それぞれを2群に分け、蒸留水(water)或いは六君子湯(RKT)(1000mg/kg/day)を2週間経口投与した。1.AngⅡ群はPBS群に比し、血圧及び心拍数が有意に増加したが、体重及び食事摂取量は有意差を認めなかった。AngⅡ-WaterとAngⅡ-RKT間にはいずれも有意差を認めなかった。2.心エコー図で測定した心機能:AngⅡ群はPBS群に比し、左室壁厚が有意に増加したが、左室内径及び左室駆出率には両群間で有意差を認めなかった。3.心房筋の線維化:①Masson&Trichrome染色:AngⅡ-WaterはPBS-Waterに比し有意に線維化を増強していたが(p<0.01)、AngⅡ-RKT はAngⅡ-Water に比し線維化を有意に抑制した(p<0.01)。②心房筋のmRNA expression:AngⅡ-WaterではPBS-Waterに比しcollagen1、collagen3、TNF-α及びIL-6のupregulationが認められたが(p<0.01)、AngⅡ-RKTはこれらを有意に抑制した(p<0.05)。4.経食道バーストペーシングによる心房細動誘発率:AngⅡ-WaterはPBS-Waterに比し心房細動誘発率は有意に増加したが(p<0.01)、AngⅡ-RKT はAngⅡ-Water に比し心房細動誘発率及び心房細動持続時間を有意に減少した(p<0.05)。5.Growth hormone secretagogue receptor(CHSR)-antagonistの効果:CHSR-antagonist投与下では AngⅡ-RKT の心房線維化抑制効果が減弱する傾向があった。6.Western blot法と胎生ラット心線維芽細胞を用いたin vivo試験において、AngⅡ-RKTではAngⅡ-Water に比しSirt1の発現が有意に増加し、GHSR-antagonist投与下ではこの増加が抑制された。AngⅡ-RKTではAngⅡ-Water に比しIkBのリン酸化が有意に抑制され、GHSR-antagonist投与下ではこの抑制が消失した。
2: おおむね順調に進展している
六君子湯の心房筋線維化抑制作用に、CHSR-Sirt1シグナリングを介した抗炎症作用が関与していることがin vivo及びin vitro実験で明らかになってきた。しかし、当初予定していたグレリン遺伝子欠損(GhrKO)マウスを用いた実験は余り進展せず、次年度以降に並行して実施する予定である。
Ⅰ.内因性グレリンの作用メカニズムの解明:野生型(WT)マウス、グレリン遺伝子欠損(GhrKO)マウスを用いて2週間のAngⅡ負荷(2mg/kg/day)モデルを作製した後、下記項目について評価する。①心機能、②心房細動誘発性、③炎症や線維化に関連するマーカー、④イオンチャネルや遺伝子トランスポーター、⑤組織学的評価、⑥細胞死の評価、⑦8-OHdG測定、⑧交感神経活性評価。2.外因性グレリンおよび六君子湯による活性酸素と心筋に対する影響の評価:10週間のAngⅡ負荷モデルを作製する。3群に分け、①生理食塩水、②グレリン(100μg/kg/day)の腹腔内投与、③六君子湯溶解液(1000mg/kg/day)の経口投与を1ヶ月間行う。各群について(1)心機能、(2)心房細動誘発性、(3)炎症や線維化に関連するマーカー、(4)イオンチャネルや遺伝子トランスポーター、(5)組織学的評価、(6)細胞死の評価、(7)8-OHdG測定、(8)交感神経活性評価を行う。3.初代培養心筋細胞を用いた炎症・活性酸素と心筋細胞に対するグレリンの直接的影響の評価:①AngII+グレリン 1nM ②AngII+グレリン 10nM、③AngII+グレリン 100nM の3群に分ける。(1)炎症、細胞死の評価、(2)活性酸素種発現の評価、(3)イオンチャネル発現の評価を行う。
一部実験の順序を入れ替えたため、30年度は物品費や旅費に余剰が出た。しかし次年度以降の実験の物品費が不足する可能性が有り、次年度に使用する予定である。
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