研究課題
核蛋白HMGB1は細胞外では炎症性サイトカインとして働くことが知られており、さらにHMGB1内に存在する3つのシステイン残基の酸化、還元によって同じ蛋白でありながら細胞遊走能や炎症性サイトカイン産生能など、その働きを変えることも分かってきた。HMGB1が慢性腎炎のKey factorであることを示した我々は漢方薬がHMGB1の酸化還元を調節することで腎炎を制御し得るという仮説をもとに研究を行っている。HMGB1の酸化還元状態を検出する方法は、質量分析法のほか立体構造の変化による移動度の違いを利用して検出するウェスタンブロッティング法がある。我々は3つの型をより高精度に検出できる質量分析による検出法の確立を目指し、検討を行った。当初、調製サンプルは3つの型として検出可能であったが、電気泳動を介しゲル上から抽出した試料は酸化還元の修飾を受けていた。そこで、次の段階としてシステイン残基にキャップを行い、一連の工程で酸化還元の影響を受けないような手法の確認、検討を行った。3つの型の作成が不十分な場合があり、繰り返し検討を要したが、最終的に3つの型の検出が可能となった。次に、生体試料からの抽出を考え、免疫沈降法での検討を行った。結果、直接法と同様に免疫沈降法でも濃度勾配も含めHMGB1の3つの型の検出が可能となった。現在、五苓散トリートによるHMGB1の型の変化について検討を行っている。また、動物実験として腎炎ラットモデルを作成。コントロール群、五苓散投与群、腎炎群、五苓散投与腎炎群の4群に分け、各個体より血液、尿、腎組織を採取している。今後、五苓散投与による各試料のHMGB1の型の変化量について検討する予定である。
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