研究課題/領域番号 |
17K09313
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
涌井 広道 横浜市立大学, 医学部, 講師 (10587330)
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研究分担者 |
山下 暁朗 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (20405020)
田村 功一 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40285143)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レニン-アンジオテンシン系 / 老化 |
研究実績の概要 |
AT1受容体結合性低分子蛋白(AT1 receptor-associated protein; ATRAP)は,『慢性的な病的刺激の持続によるAT1受容体情報伝達系の過剰活性化に拮抗する内在性抑制分子』である可能性がある.本研究では,ATRAPの発現・活性調節機構異常と老化にともなう心血管病との関連について多面的に検討し,ATRAP の老化にともなう心血管病における病態生理学的意義の解明,および ATRAP に着目した新規分子標的治療法の開発に向けた検討を行った. 野生型マウスに,低用量のAng IIを慢性的に投与すると,体重,脂肪重量や血圧に明らかな変化を及ぼさずにインスリン抵抗性が生じた.骨格筋において,Ang II投与によりp38 MAPK活性化と,酸化ストレス増大が生じ,糖輸送体GLUT4の発現低下が認められた一方,脂肪組織では,Ang II投与による炎症や酸化ストレス増大などの変化を認めなかった.これに対して,アディポネクチンプロモーター制御下で作製した脂肪組織および骨格筋組織ATRAP高発現マウスでは,Ang II投与によるインスリン抵抗性の増悪を認めず,野生型マウスでみられた骨格筋での酸化ストレス増大-p38MAPK活性化-GLUT4発現低下による糖取り込みの減少が抑制されていた.一方で,脂肪組織においては形態的・機能的変化は認められなかった.以上より,生体での循環Ang IIの増加は,骨格筋組織でのAT1受容体の過剰活性化を引き起こして糖取り込みに影響することで,老化に伴う脳心血管病および糖尿病の基盤となるインスリン抵抗性を引き起こすと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究と合わせて,脂肪組織や骨格筋でのATRAPの活性化が,肥満だけでなく非肥満状態においてもAT1受容体の過剰な活性化を抑制することで,老化に伴う脳心血管病の病態形成にかかわるインスリン抵抗性を改善させることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
種々の老化促進刺激による糖脂質代謝異常に加えて,腎障害や心障害に対するATRAPの機能的意義の検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
動物飼育費が当初の予定より少なかったため次年度使用額が生じた.次年度,発現解析用試薬の購入に充てる予定である.
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