研究課題/領域番号 |
17K09317
|
研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
内田 耕一 山口県立大学, 看護栄養学部, 教授 (80397992)
|
研究分担者 |
森塚 潤子 山口県立大学, 看護栄養学部, 助手 (10738420)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 防風通聖散 / CGMS / 慢性肝疾患 |
研究実績の概要 |
これまでのところ10名の患者より同意を得ることができ、臨床研究を行った。内訳はC型肝硬変、B型肝硬変、C型肝炎、B型肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎から肝硬変を発症した患者であった。24時間持続血糖測定(以下CGMS)を7日間施行し、血糖動態と食事との関連性について検討している。一例を挙げると非アルコール性脂肪性肝炎からの肝硬変患者に対して防風通聖散TJ-62を3か月投与した。防風通聖散TJ-62を投与することにより体重減少を認めた。CGMSを使った検討では、高血糖の時間帯の割合は朝食後12%、昼食後6%、夕食後8%と改善していた。防風通聖散による体重減少からのインスリン抵抗性の改善を認めた。本症例については第22回日本病態栄養学会年次学術集会において「クローン病による食事の偏りが原因でNASH由来肝硬変を合併した症例―CGMSを用いた数年間の検討―」として報告発表を行った。クローン病にNASH由来肝硬変を合併し、耐糖能異常をきたした症例についてCGMSを用いて血糖動態を5年間検討した。同患者では朝食摂取時は昼食後の血糖上昇幅が低く改善していた。翌年には肥満に対して漢方薬の防風通聖散を開始後肥満及びインスリン抵抗性は改善傾向を認めたが、肝機能増悪を認めたため中止。SGLT-2阻害薬に変更した。CGMSにて日内血糖変動幅(MAGE:the mean amplitude of glycemic excursions)の改善を認めた。 このようなCGMSを用いた24時間の血糖動態と運動の関係性をモニタリングは患者の肝予備能と糖代謝に適した運動療法の提案の材料になると考えられ、インスリン抵抗性を中心とした糖代謝異常に防風通聖散は有効と考えられた。 以上より計画は順調に進行している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性肝疾患患者の抽出が順調に行われている。対象患者を抽出後BMI25以上の肥満患者に対しては、防風通聖散TJ-62 を投与し臨床学的に肥満に対する加療を行い、同時にCGMSを用いて血糖の日内変動耐糖能異常に対する影響を検討している。また初年度に検討を行った症例についても継続して検査を行っている。集まったデータより各種マーカーとCGMS の関連性、食品栄養素との関係の検討を行っていく。 以上より順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度として、引き続き症例の蓄積を行っていく。症例蓄積のために関連施設との密な連携をとる。 本年度の目標として、CGMSから得られた肝硬変患者における血糖動態、肥満との関係性、防風通聖散投与による効果について検証していく。特に栄養学的見地から見た血糖動態を改善する方法について検討することと、効果がある症例ない症例について検討し論文化していく。また低栄養状態の肝硬変患者において投与される分岐鎖アミノ酸製剤による血糖動態への関係性についても検討したい。これまでは分岐鎖アミノ酸製剤を投与しても、臨床の現場としてその効果を検証する手立てが乏しく漫然と投与されるままとなっている。本当に有用な症例の抽出ができれば無駄な医療費の削減にもつながる。そしてそのような分岐鎖アミノ酸製剤が無効な患者にどのようにアプローチすべきかについても検討したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度使用予定としていた金額よりも旅費が安く計上できたため、次年度分として使用が生じたため。
|