【背景】生活様式の欧米化に伴い、生活習慣病が増加し、特に肥満による様々な合併症が問題視されている。肥満に高頻度に合併する脂肪肝、なかでも非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)は進行すると肝線維化を起こしたり、最終的には肝硬変や肝癌も発症することが報告されている。 【目的】防風通聖散TJ-62は褐色脂肪組織での熱産生を促進して体脂肪を低下させ肥満を改善する。また、臨床的にも脂肪肝を改善することが報告されているが耐糖能異常に対する詳細なメカニズムについてはわかっていない。脂肪肝、ナッシュ(NASH)、肝硬変における耐糖能異常のメカニズムおよび、防風通聖散TJ-62の耐糖能に対する効果の詳細な解明を目的とする。 【結果】非アルコール性脂肪性肝炎からの肝硬変患者に対して防風通聖散TJ-62を3か月投与した。防風通聖散TJ-62を投与することにより体重減少を認めた。持続血糖測定装置CGMSを使った検討では、高血糖の時間帯の割合は朝食後12%、昼食後6%、夕食後8%と改善していた。防風通聖散による体重減少からのインスリン抵抗性の改善を認めた。CGMSにて日内血糖変動幅(MAGE:the mean amplitude of glycemic excursions)の改善を認めた。 このようなCGMSを用いた24時間の血糖動態と運動の関係性をモニタリングは患者の肝予備能と糖代謝に適した運動療法の提案の材料になると考えられ、インスリン抵抗性を中心とした糖代謝異常に防風通聖散は有効と考えられた。 その他の患者においても防風通聖散TJ-62他の漢方薬を投与し、CGMSで血糖動態について検討した。防風通聖散は瀉剤として使られることから副作用も強く継続投与が困難となる症例もあった。総じて体重減少とともに、血糖動態は改善した。今後成果をまとめる予定である。
|