研究課題/領域番号 |
17K09319
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
永井 隆之 北里大学, 大学院感染制御科学府, 准教授 (00172487)
|
研究分担者 |
伊藤 直樹 北里大学, 東洋医学総合研究所, 上級研究員 (00370164)
小寺 義男 北里大学, 理学部, 准教授 (60265733)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | うつ / 社会的ストレス / マウスモデル / 漢方薬 / 香蘇散 / プロテオーム解析 |
研究実績の概要 |
研究代表者及び研究分担者はこれまでに環境ストレスである慢性マイルドストレスを負荷して作成したうつ様モデルマウスに対して、漢方方剤「香蘇散」煎剤が経口投与により抗うつ様活性を示すことを明らかにした。また、香蘇散煎剤の抗うつ様活性発現の機序を明らかにするため、脳の視床下部についてプロテオーム解析を行い、環境ストレスを負荷することによって発現量が変化し、香蘇散煎剤の投与によって発現量が回復するタンパク質を複数種類見出した。しかし、対人ストレスのモデルである慢性社会的敗北ストレスを負荷して作成したうつ様モデルマウスに対する香蘇散煎剤の抗うつ様作用のプロテオーム解析による検討は行われていない。そこで、今年度は慢性社会的敗北ストレス誘発うつ様モデルマウスのうつ様行動の検討と脳の海馬のプロテオーム解析を行った。 その結果、社会接触行動試験において、慢性社会的敗北ストレスを負荷することによってマウスにうつ様行動が認められることが明らかになった。また、同マウスの海馬について安定同位体標識法によるプロテオーム解析を行ったところ、慢性社会的敗北ストレス負荷で発現量が変化するペプチドが211種見出された。これらのペプチドから慢性社会的敗北ストレス負荷により発現量が増加したタンパク質89種と減少したタンパク質100種、計189種のタンパク質が同定された。 以上、今年度の結果より、慢性社会的敗北ストレス誘発うつ様モデルマウスが作成できたこと、及びプロテオーム解析により同マウスの海馬において慢性社会的敗北ストレス関連タンパク質が同定できることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的のひとつである社会的ストレスに対する漢方方剤「香蘇散」煎剤の抗うつ様活性の機序のプロテオーム解析による解明には、まず、社会的ストレスによってうつ様モデルマウスを作成すること、並びに社会的ストレスの負荷によって発現量が変化するタンパク質をプロテオーム解析で同定できることが必要不可欠である。 今年度の検討において、慢性社会的敗北ストレスの負荷によってマウスがうつ様行動を示すこと、並びに安定同位体標識法によるプロテオーム解析により同マウスの脳の海馬においてストレス負荷によって発現量の変化するタンパク質が見出されたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の検討において、①慢性社会的敗北ストレスを負荷することによってマウスにうつ様行動を惹起することが出来、②同マウスの脳の海馬について安定同位体標識法によるプロテオーム解析を行うことによりストレス未負荷マウスと比べて発現量が変化するタンパク質を見出すことが出来ることが明らかになった。そこで、次年度以降は慢性社会的敗北ストレス誘発うつ様モデルマウスに漢方方剤「香蘇散」煎剤を経口投与することによって、抗うつ様活性が認められることを確認する。また、香蘇散投与マウスの海馬についてプロテオーム解析を行い、ストレス負荷によって発現量が変化し、香蘇散の投与によって発現量が正常状態に回復するタンパク質の探索を行う。さらに、見出されたタンパク質についてウェスタンブロッティングにより発現量の変化の確認を行い、脳の免疫組織染色により発現が変化する部位の検討を行う。アンタゴニスト、特異抗体、siRNAが使用可能である場合には、これらを用いて見出されたタンパク質のうつ様病態や香蘇散の抗うつ様作用との関連についての検討を環境ストレス誘発うつ様モデルマウスも含めて行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
慢性社会的敗北ストレス誘発うつ様モデルマウスに対する漢方方剤「香蘇散」煎剤の経口投与による抗うつ様活性の検討の実験を開始する予定であったが、年度末で科学研究費助成金が一時的に使用出来なくなったため、次年度使用額が生じた。本予算は次年度に当初の予定通り、慢性社会的敗北ストレス誘発うつ様モデルマウスに対する漢方方剤「香蘇散」煎剤の経口投与による抗うつ様活性の検討のためのマウス購入代金として充当する予定である。
|