研究課題/領域番号 |
17K09320
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 直樹 北里大学, 東洋医学総合研究所, 研究員 (00370164)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 未病 / 老化促進マウス / うつ / 不安 / 概日リズム |
研究実績の概要 |
前年度までの検討で我々は、社会的ストレス誘発うつ様モデルマウスを用いて、漢方薬「香蘇散」のうつ予防効果、うつ再発防止効果、並びに香蘇散と既存の抗うつ薬の併用による治療効果を明らかにし、さらにその作用メカニズムの一部に脳内炎症の制御が共通して関与することを示してきた。これらの成果は、病気を未然に防ぐ未病制御に通ずる可能性を示している。近年、超高齢化社会を見据え、病を未然に防ぐ医療(未病制御)が注目されているが、その未病を評価できる研究手法やモデルが不足している現状がある。そこで本年度は漢方薬の未病制御解明に先立ち、実験動物を用いて未病の評価モデルの構築を行った。以下に得られた成果の概要を示す。 ・老化促進マウス(SAMP8マウス)は、8週齢では特に目立った異常は観察されないが、17週齢に達すると不安様行動やうつ様行動、概日リズム異常などの情動行動異常が認められた。 ・また情動行動異常が示された週齢で、SAMP8マウスは脳内炎症が誘導され、また末梢臓器における時計遺伝子発現パターン(末梢時計)も乱れていた。 以上の結果から、SAMP8マウスはある週齢に達すると、情動的な異常と脳内炎症が引き起こされることが示唆された。則ち、SAMP8マウスは脳内炎症に伴う情動行動の異常を自然発症する系統であると推察され、それらの異常が顕在化するまでの状態を未病状態と捉えることができると考えられた。これらの成果は、SAMP8マウスが未病の新たな評価系の一つになり得る可能性を示しており、次年度以降の未病制御研究に役立てられることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、社会的ストレスモデルを用いて未病評価系の構築を計画していたが、別の研究で老化促進マウス(SAMP8マウス)が未病の状態を呈する可能性が示されたことから、本年度ではその解析を中心に行い、最終的に未病評価モデル系をうまく構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度構築した未病評価モデル系を用いて、香蘇散の長期投与が未病制御にどのように作用するのかを検討する予定である。また、加齢に伴う疾患に多用される漢方薬との効果を比較することにより、加齢に伴う諸症状に対する有効性の違いを明らかにできると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に構築した未病評価モデルには、老化促進マウスであるSAMP8マウスを使用したが、この系統のマウスは非常に高価である。次年度に漢方薬の未病制御の解析の検討を行うためには、SAMP8マウスを多数用いる必要があり、それに当てるための予算を繰り越した。
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