研究実績の概要 |
【目的】警察庁の統計によると2017 年の 65 歳以上の免許保有者は 約 1,820 万人 であり 免許保有者 全体のおよそ 22%にあたる.約 8割が移動の自由のため車が必要と回答してお り、今後も 高齢ドライバの 増加が見込まれ、高齢ドライバの 交通事故予防対策が求められている.高齢者にはフレイルが多いが、特にフレイル高齢者の運転の力は低いと考えられる.軽度認知障害: MCI は精神・心理的 フレイルに分類される.交通事故の原因のひとつに ハザード(事故発生の可能性を高めるような環境条件,事象,要因)の見落しが挙げられる. 【方法】高齢ドライバのハザード知覚とハザードに対する運転行動を計測するため, 定置型のドライビングシミュレータを用い ,市街地走行中に遭遇が想定されるハザードを 再現した. 【結果】高齢ドライバは非高齢ドライバよりも有意にブレーキ反応時間が長かった(F(1,79)=17.80, p<0.05. 「横断歩道付近の歩行者」ハザードにおいて減速を行わない傾向が認められ、「左前方を走行する自転車」においてハザード自転車との最小距離が短く,最小速度が高い傾向にあった.「車の陰から飛び出す子ども」ハザードでは、高齢ドライバ群の情報提示がない場合は1.60s(標準偏差 0.45s, N=22),ある場合は1.45s(標準偏差0.91s, N=15)であった.認知機能検査 MMSE TMT の評価が低い群での運転行動で、アクセルペダルの操作時間と TMT-B の遂行時間に関係が見られた. 【結論】上記のように、即座に回避が必要な顕在的ハザードに対し、高齢ドライバは反応に遅れが見られた.今後の課題として、高齢ドライバのハザード見落としを防ぐ効果的な運転支援法として、ハザードの注意喚起情報を事前に提示する方法の開発が急務であることが明らかになった.
|