研究実績の概要 |
本研究では、ミトコンドリアでの電子伝達を助ける天然アミノ酸であるアミノレブリン酸(ALA)による、サルコペニアの改善の可能性を検討した。C57bl6マウスにALA含有飼料を8週間与え、身体能力や筋肉量、ミトコンドリア関連分子ならびに筋肉量制御因子の発現を評価した。ALA投与マウスでは骨格筋量および骨格筋ミトコンドリアの増加と持久力・筋力の向上を認めた。さらにミトコンドリア活性化因子の発現亢進、筋肉分解因子の発現低下を認め、筋肉量制御の重要因子であるtarget of rapamycin complex-1 (TORC-1)は活性化していた。メタボローム解析にてTORC1を介して骨格筋量を増やす働きが知られている分枝鎖アミノ酸(BCAA)がALA投与マウスで増加していた。定量的PCR法では、BCAAの分解酵素の発現が低下していた。以上より、ALAは骨格筋ミトコンドリアを活性化するのみならず、BCAAの分解抑制を介して筋肉量を増加させたと考えられた。この研究成果を踏まえ、ヒトへの応用を目指した研究課題である、「骨格筋ミトコンドリアとアミノ酸代謝に着目したサルコペニア先制医療の開発」が、2018年度AMED事業に採択された。 続いて、発症機序を詳細に検討するためデキサメタゾン(Dex)投与によるサルコペニアモデルマウスの解析を行った。Dexを21日間投与したところ、骨格筋量の減少と握力・持久力の低下、耐糖能の顕著な悪化を認めた。Dex投与終了35日後も耐糖能障害は持続した。Dpp-4遺伝子のエピゲノム変容を検討したところ、末梢血単核球においてDpp-4プロモーター領域におけるヒストンアセチル化の亢進が、Dex中止35日後まで顕著に認められた。このことが血中DPP-4活性の上昇, GLP-1レベルの低下と、相対的なインスリン分泌不全ならびに耐糖能悪化に関与する可能性が示された。
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