| 研究課題/領域番号 |
17K09328
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| 研究機関 | 日本医科大学 |
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研究代表者 |
高久 俊 日本医科大学, 医学部, 講師 (50445813)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 漢方薬 / 担がん宿主 / 抗ウイルス細胞性免疫 |
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| 研究実績の概要 |
漢方薬十全大補湯が担がんマウスの抗ウイルス細胞性免疫に及ぼす影響を調べるため以下の実験を施行した。（方法）1x106のマウス大腸がん細胞CT26 を6週齢の雌のBALB/c マウスに経皮的に接種した。また同時に漢方非含有飼料あるいは十全大補湯配合飼料摂取を開始した。腫瘍接種2週間後にヒト免疫不全ウイルス由来外被糖蛋白(HIV-1 env gp160)を発現する組替えワクチニアウイルス(vSC25)を経腹膜的に接種した。vSC25接種1週間後にこれらマウスから脾臓細胞を単離しHIV-1 env gp160特異的細胞傷害性CD8陽性T細胞 (CTL)数ならびに骨髄由来抑制細胞（Myeloid-derived suppressor cells: MDSC）数を調べた。尚、非担がん個体の対象群として更に、i) vSC25接種＋漢方非含有飼料摂取群 ii)vSC25接種＋十全大補湯配合飼料摂取群、を設定した。（結果）腫瘍接種21日目にex vivoで脾臓細胞中のHIV-1 env gp160特異的CD8陽性CTL数をそのエピトープペプチドP18-I10/H-2Ddテトラマーを用いて調べたところ漢方摂取群で有意に増加していた。尚、非担がん個体では漢方摂取の有無はテトラマー陽性細胞数に影響を与えなかった。次に漢方薬が抗ウイルス免疫を負に制御する免疫抑制系細胞に及ぼす影響を調べるためex vivoで脾臓細胞中のMDSC数を調べたが、漢方摂取は腫瘍の有無に関わらずPMN-MDSC数およびM-MDSC数に何らの影響も与えなかった。尚、本実験において漢方薬摂取の有無は腫瘍増殖に影響せず全例で腫瘍は生着した。（結論）本研究から十全大補湯はin vivoで治療的抗腫瘍効果を示さないものの、MDSC非依存的に担がんマウスの抗ウイルス細胞性免疫の向上には寄与することが明らかとなった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が発令されたこと、またその後の三密の回避など年間を通じて研究活動のあらゆる側面で制限が生じた結果、当初予定していた研究が昨年度計画の半分程度しか施行できなかったため。
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| 今後の研究の推進方策 |
1.担がんマウスにおける十全大補湯の抗ウイルス免疫増強メカニズムの解明
今回の結果から十全大補湯はin vivoで治療的抗腫瘍効果を示さないが、MDSC非依存的に担がんマウスの抗ウイルス細胞性免疫向上に寄与することが明らかとなった。そこで次年度は、担がんマウスにおける十全大補湯の抗ウイルス免疫増強メカニズムの解明を目指す。具体的にはvSC25接種担がんマウス脾臓細胞中のFoxp3陽性CD4陽性Treg細胞に焦点を当て、漢方薬摂取がTreg数に及ぼす影響を調べる。もし漢方薬摂取群でその数が低下していた場合、次にTreg細胞が直接的に担がんマウスの抗ウイルス免疫に影響を及ぼすのか否かを確認する。具体的にはvSC25接種担がんマウスに抗CD25抗体を投与してTreg細胞を除去した場合にP18-I10陽性CD8陽性T細胞数が増加するか否かで検証する。
2. 担がん個体の既感染ウイルスに対する細胞性免疫に与える漢方薬の影響
P18-I10 を認識するT 細胞レセプターを発現するトランスジェニックマウス（Tg-RT1マウス）においては、基本的に局所増殖のみに留まるCT26腫瘍負荷だけではvSC25に対する抗ウイルス細胞性免疫応答は維持される。そこでCT26の代わりに高度に肺転移などを生じsystemicな免疫応答が強く抑制されるマウス乳がん細胞株4T1を接種しTg-RT1マウスの抗ウイルス免疫が抑制されるか否かを調べる。もし4T1により同マウスの抗ウイルス細胞性免疫が抑制された場合、次に十全大補湯でその抑制が解除されるか否かを検討し、既感染ウイルスに対する細胞性免疫向上に果たす同漢方薬の役割について明らかにする。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより我が国でも緊急事態宣言の発令などがあり当初の研究計画が大幅に狂い結果として予定していた実験が施行できず誠に不本意ながら研究補助機関を一年間延長することとなった。今後も予断を許さない状況であるが、現状ではマウスの供給などには大きな問題はなく、また適切な力価のvSC25も十分量存在する。従って、繰り越した研究費は、本研究を遂行するにあたり必要な実験動物（BALB/cマウス）、試薬薬品類、培地血清類、プラスチック器具、各種抗体などの消耗品の購入に、その大半を充てる予定である。また一部を学会での研究成果公表の際に必要な出張経費また論文投稿および掲載料などに充てる予定である。
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