研究実績の概要 |
今年度は前年度までの知見に基づき研究成果を論文にまとめ最終的に査読付き国際誌に受理された。以下に概要を記す。 担がん宿主で低下した抗ウイルス免疫の向上に、がん患者のQOLの改善に有効といわれている漢方薬十全大補湯 (JTT)が果たす役割をマウス担がんモデルを用いて調べた。マウス大腸がん細胞株CT26 を経皮的に接種した雌性BALB/c マウスを①JTT非含有飼料群②JTT配合飼料摂取群に分け、腫瘍接種2週間後にヒト免疫不全ウイルス由来外被糖蛋白(HIV-1 env gp160)を発現する組替えワクチニアウイルス(vSC25)を経腹膜的に接種し、1週間後にこれらマウスから脾臓細胞を単離しvSC25が発現するgp160由来のエピトープペプチドP18-I10/H-2Ddテトラマー陽性CD8+ T細胞数を抗ウイルス細胞性免疫の指標として調べた。(結果)JTT自体はin vivoで何らの腫瘍増殖抑制効果も示さなかった。また担がんマウスでは非担がんマウスと比較してテトラマー陽性細胞数が有意に低下した。しかしJTT摂取はそのような低下を有意に回復させた。次に抗ウイルス免疫低下を惹起する免疫制御系細胞CD4陽性制御性T細胞 (Treg細胞)および骨髄由来抑制細胞 (MDSC)への介入が担がん宿主の抗ウイルス免疫向上に果たす役割を調べるため、vSC25接種担がんマウスから抗CD25抗体あるいは抗Gr-1抗体を用いて各々Treg, MDSCを除去したところ、抗腫瘍効果自体は全く認められなかったものの、両処置群において、テトラマー陽性細胞数は有意に上昇した。しかしvSC25接種担がんマウスにおいてJTT摂取の有無はTregおよびMDSC数に何の影響も与えなかった。結論)JTTは担がんマウスの抗ウイルス免疫向上にTreg細胞およびMDSC非依存的に貢献する。
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