研究課題
現代社会において、うつ病の早期の回復と予防が重要とされている、主要な薬物療法である抗うつ薬は、しばしば望ましくない副作用を引き起こす。我々は、代表的な抗うつ薬であるイミプラミンと比較して、西洋薬よりも副作用が少ない日本の伝統治療薬である漢方薬(柴胡加竜骨牡蛎湯)と鍼治療(経穴としてGV20とEx-HN3を用いた)の予防効果と治療効果について、さらにその単独療法と併用療法の相違について検討した。強制水泳(FS)ストレスによってもたらされる不動時間を測定して、効果判定を行った。さらに、分子生物学・生化学的手法により経栄養因子の変化をとらえることで、伝統医療の効果発現メカニズムを解析した。予防的評価におけるすべての介入グループおよび治療的評価における治療グループは、不動時間を悪化させることはなく、FSストレスによって誘発される長期不動時間をそれぞれ改善した。ただし、介入群と治療群のどちらの時間にも有意差は認められなかった。鍼治療群と漢方鍼併用群のBDNFとNT-3は、予防群と各種治療群の両方でFS群のそれらよりも高かった。漢方鍼併用群のNGFはFS群と同じで、予防群と各種治療群の両方で、鍼、漢方、イミプラミン群よりも高かった。これらの所見は、鍼と漢方がイミプラミンとは異なる神経栄養因子の調節メカニズムを通じてうつ病を改善すること、および漢方鍼併用療法が鍼または漢方単独治療では発揮しない特別な抗うつメカニズムを持っていることを示唆している。漢方鍼併用療法による特別な効果をより正確に評価するためには、より多くのうつ病評価尺度を利用してうつ症状の改善度を厳密に評価する必要がある。また、神経栄養因子のみではなく、視床下部・下垂体・副腎関連のストレスホルモンの変動にも注目することが重要といえる。
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Journal of Complementary Medicine & Alternative Healthcare
巻: 11 ページ: -
10.19080/JCMAH.2020.11.555803