研究課題/領域番号 |
17K09333
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
苗村 建慈 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (30228085)
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研究分担者 |
浅沼 博司 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (20416217)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性呼吸器疾患 / 鍼灸治療 / 統合医療 / 慢性閉塞性肺疾患 / COPD / 肺気腫 / 気管支喘息 / 特発性間質性肺炎 |
研究実績の概要 |
本研究では、地域医療において、高齢者に多い呼吸器疾患を対象に、現代医学の標準的治療に鍼灸治療を併用した統合医療の場として、附属病院と附属鍼灸センターを中心とした地域医療と臨床研究の体制を確立する。これにより、地域医療に貢献し、補完医療として鍼灸治療の研究を深めることを目的とする。具体的には、現代医学の標準的治療に鍼灸治療を併用した統合医療により、慢性呼吸器疾患(気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性間質性肺炎)に対する臨床効果を検討した。1. 気管支喘息では、運動誘発性喘息と診断された患者23名を対象に鍼治療を行い、運動負荷後の閉塞性換気障害の増強を示す1秒量の低下、喘息の病態である気道過敏性の亢進、病因である気道炎症の抑制効果が有意に認められた。2. COPDでは、患者8名を対象に鍼治療を併用し、修正MRCの呼吸困難重症度やGOLD重症度分類で示される病期が改善する傾向、SGRQで示されるCOPD患者の予後因子であるQOLが改善する傾向も認められた。また、6分間歩行試験による歩行距離が増加し、運動耐容能の有意の改善が認められた。呼吸機能検査では、肺活量VCと最大吸気量ICは増加傾向を示し、努力性肺活量FVCと1秒量FEV1が有意に増加し、拘束性換気機能の改善が認められた。鍼治療により、予後予測因子であるBODE indexが有意に改善し、COPDに合併する肺高血圧症や右心不全の改善傾向も認められ、予後の改善効果が示唆された。予後予測因子のBODE indexの改善と予後不良因子の肺高血圧や右心負荷の改善傾向は、過去に報告なく、本研究の特色である。3. 特発性間質性肺炎の患者3名を対象に鍼治療を併用し、呼吸困難重症度、6分間歩行試験による呼吸困難重症度、運動耐容能や歩行中の動脈血酸素飽和度の改善と、間質性肺炎の活動性を示すバイオマーカKL-6の低下が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
理由:上の区分を選択した理由を簡潔に入力すること(最大800字 改行5回まで) 1)鍼灸治療を担当する鍼灸師が配置転換となり、交替の鍼灸師の着任に時間を要したことと、着任後、研究に必要な教育・研修(呼吸器疾患の理解、各種検査法の理解と実践のための練習など)について、さらに、時間を要した。研究に協力する鍼灸師の交替が遅延したことにより、被験者である各疾患の患者において、各患者が安定して通院できる研究期間として、コロナウイルス感染症の第2波、第3波相当する5-7月、9-11月の期間がとれなかったことも、予定通り、研究が遂行できなかった主な原因の一つである。 2)a)当院通院の気管支喘息患者の中で、1週間に1度の頻度で、鍼灸治療を併用した統合医療の治療を受けることのできる患者が少なかった。このため、運動誘発性喘息と診断された、主に青年期(学生、大学院生)の症例を対象に、研究を実施することとした。 b) COPD患者は高齢者が多く、呼吸困難の症状もあることから、1週間に1度の頻度で鍼灸治療のために通院することや、継続的に鍼灸治療を受けることのできる患者が少なかった。目標症例の達成が困難な状況であっても、条件反転法下に研究を実施する。 c)特発性間質性肺炎の患者で、鍼灸治療を希望する患者が少なかった。COPD患者と同様に、高齢者が多く、呼吸困難の症状もあることから、1週間に1度の頻度で通院することや継続的に鍼灸治療を受けることのできる患者が少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)本年度の決められた期間に研究を行うため、各疾患に対する鍼灸治療を並行して行う体制を設定する。このため、各疾患ごとに、研究に協力する鍼灸師を教育・研修し、養成する。 2)a) 運動誘発性喘息について、令和3年度は、8-10 名の被験者を治療し、条件反転法下に対照研究を実施する。 b) COPDについては、少数症例であっても、条件反転法下の対照研究として行う方針である。目標症例の達成に時間を要する場合は、症状、呼吸困難重症度や運動耐容能、歩行時の経皮的動脈血酸素飽和度、呼吸機能や呼吸筋力などと、心負荷との関係について、令和2年3月までの治療症例数で解析し、中間報告を行う方針である。鍼治療期間前後で、治療効果を比較し、症例集積研究として評価することも検討する。 c)特発性間質性肺炎では、令和3年度も、患者3-5名の症例で、可能な限り条件反転法下に研究を行い、治療効果を検討する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)当該年度の研究について、備品に関しては、前年度までの支出による物品を使用することで、研究を遂行することができた。また、消耗品に関しては、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性間質性肺炎のいずれの疾患においても、研究症例数が少なかったため、1.気道炎症の評価のための呼気NO濃度測定装置NIOX MINOのセンサーの使用頻度が少なかったこと、2.一定の症例数に達するまで、検体の測定ができないため、血清検体を凍結保存するなど、次年度に測定が延期されたこと、の2つの理由により、消耗品費の使用が少なかったために、次年度使用額が生じた。 2)次年度使用額の使用計画として、研究対象である各疾患(気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性間質性肺炎)について、呼吸機能検査、各疾患の重症度分類のための検査とともに、気道炎症の評価のための呼気NO濃度測定、各種血液検査を、本年度も、鍼灸治療期間前後で行う予定である。
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