研究課題/領域番号 |
17K09337
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
津田 和志 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (90217315)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高血圧 / メタボリックシンドローム / 細胞膜機能 / 赤血球 / ADMA / adipokine / TNFα |
研究実績の概要 |
肥満は糖尿病、高血圧をはじめとする生活習慣病の危険因子のひとつであり、メタボリックシンドロームの基盤となるが、肥満の血圧上昇作用や心血管病変を引き起こすメカニズムについては不明な点が多い。最近、高血圧の病態生理を細胞膜レベルの異常からとらえようとする考え方が提唱され、我々も電子スピン共鳴ならびにスピンラベル法を用いて高血圧患者の細胞膜流動性(fluidity) が低下していることを報告した。本研究で我々は電子スピン共鳴法を用いて高血圧患者の細胞膜fluidity を測定し、その調節機序を肥満関連内分泌因子の関与から考察した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧者に比し有意に低下していた。 さらに我々はnitric oxide(NO) synthaseの内因性阻害物質である血中asymmetric dimethylarginine (ADMA)濃度は高血圧群で正常血圧群に比し有意に高値であり、赤血球膜fluidityの悪化と相関することを報告した。この成績は内皮機能不全が高血圧の膜機能調節に重要な役割を果たす可能性を示唆するものと考えられる。 一方、adipokineのひとつであるtumor necrosis factor α(TNFα)の血中濃度が増加しているほど、赤血球膜fluidityは低下していた。さらに血中TNFα濃度は血中ADMA濃度と有意に相関した。このことはTNFαが一部内皮機能不全を介して膜fluidity調節に関与することを示すものと考えられる。以上から、肥満に関連した内分泌因子が高血圧の細胞膜機能に重要な影響を及ぼし、それらの調和破綻がメタボリックシンドロームの心血管病の成因に一部関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子スピン共鳴を用いた細胞膜fluidityの測定は安定しており、内分泌因子との関連についても興味ある結果が得られつつある。全体としておおむね順調に研究計画を遂行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
肥満の血圧上昇作用や心血管病変を引き起こすメカニズムについては、未だ不明な点が多い。今後も肥満に関連した内分泌因子の高血圧細胞膜機能に及ぼす影響と、それらのメカニズムについて詳細に検討してゆく予定である。
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