日本食は健康食といわれ、抗炎症効果が期待できるのではないかと考えられている。地中海食もまた健康食といわれ、生活習慣病の予防、癌予防、認知症の予防など有益な効果があることが広く世界中で確認されている。一方、フレイル(高齢者の虚弱状態)は健康長寿の重要な阻害因子の一つとされており、その進展には加齢に伴う慢性炎症が深く関与していると推測される。本研究の目的は、高齢者でのフレイル予備群からフレイルへの進展予防効果に対する日本食型食習慣ならびに地中海食の有用性を明らかにすることにある。地域在住の高齢者を対象として、生活習慣調査、身体計測、身体機能測定、食事調査、認知機能・低栄養状態の評価を行った。フレイルの状態は体重減少、筋力低下、歩行速度の減退、主観的活力低下、活動量減少により判定した。食事調査により食品摂取量および主要栄養素の摂取量の分析から日本食や地中海食など主要な食事摂取パターンを抽出した。日本食は健康長寿に寄与するところが大きいと考えられるが、日常的に食している日本食型食習慣を適切に評価するための指標に欠けることから、簡単に評価できる日本食スコアの開発が重要になると思われた。われわれは10項目の日本食スコア(野菜、大豆、漬物、海藻、魚、米飯、味噌汁、緑茶、和菓子、肉・加工肉)を新規に構築し、その有用性について検証することにした。さらに、食事由来の炎症惹起性は加齢炎症を促進させフレイルの要素であるとの考えもある。食事炎症性を考慮した視点から、バランスの良い食事とは何かを考え、日本人の食習慣に適した16食品からなるエンピリカル食事炎症性スコアを新たに構築し、その応用可能性についても実証した。
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