研究課題
H29年度は胃粘膜Lgr5陽性細胞およびKRT19陽性細胞に誘導性にTGFbR2を欠失させヘリコバクター感染後の胃粘膜の分化マーカー発現変化を検討した。いずれも感染に伴い体部胃底腺にGSII/TFF2、アルシアンブルーで染色される化生性変化と胃幹細胞マーカーSox9/CD44の発現増加が見られた。ジフテリアトキシンを用いてLgr5陽性細胞の選択的排除を行いGSII陽性化生粘膜に変化がないことを確認し、TGFbシグナルやLgr5陽性主細胞が化生変化に果たす役割が限定的であることを示した。H30年度は遺伝子変異オルガノイドの癌化についてヌードマウスへの接種にて検討した。KRT19陽性胃底腺幹細胞はTGFbR2とKras遺伝子異常だけでは腫瘍化せず、さらにCDH1遺伝子の欠失が必要であった。次に恒常的に腺窩上皮に遺伝子異常を導入する目的で、TFF1-creマウス系統を樹立し、活性型Kras遺伝子変異の影響を検討した。生後4週より腺窩上皮の過形成による粘膜肥厚とアルシアンブルー、Sox9/CD44陽性の化生性腺管が出現し、ヘリコバクター感染と同様の胃炎が起こっていると考えられた。このマウス胃底腺から作成したオルガノイドも野生型に比べ細胞増殖が亢進していた。H31/R01年度はSox9ノックアウトマウスを用いてKras遺伝子変異による化生粘膜におけるSox9の役割を検討した。KRT19/変異型Kras/ TGFbR2欠失マウスは胃食道接合部にSox9/CD44強陽性の浸潤癌を発症したが、Sox9遺伝子の欠失は腫瘍のサイズや悪性度に変化を及ぼさなかった。一方TFF1-cre;Sox9KOマウスは胃前庭部に限局した炎症細胞浸潤と化生変化を発生させた。Sox9が欠失した上皮は幹細胞マーカーCD44陽性となっており、Sox9よりもCD44が化生、腫瘍化に重要な役割をはたすことが示唆された。
すべて 2019
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J Pathol.
巻: 247 ページ: 35
10.1002/path.5163.