研究課題/領域番号 |
17K09347
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神宝 隆行 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (90791591)
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研究分担者 |
早河 翼 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60777655)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 幹細胞 / Dysbiosis |
研究実績の概要 |
98サンプルのヒト大腸洗浄液中の細菌DNAを解析したところ、大腸癌、大腸腺腫、および正常大腸の患者群でそれぞれ43、51、46%がpks陽性大腸菌を有していた。年齢・性別・癌のステージなどで層別化を行なったが、群間で陽性率及び発現量に有意差を認めなかった。今回pks陽性大腸菌の有無を大腸洗浄液中から非侵襲的に検出する方法を確立できたため、国際科学誌に報告した。 マウスモデルの検討では、消化管上皮障害時の幹細胞・前駆細胞の動態について系譜解析によって検討を行なった。Doxorubicinによる薬剤性消化管障害の過程において、前駆細胞内でNotch経路の活性が起き、幹細胞へと脱分化することがわかった。一方幹細胞は障害後に急速に消失し、再生にも寄与していなかった。この脱分化した前駆細胞は癌起源細胞としての働きも有していた。Notch経路が活性化しうるDysbiosisモデルとしてCd11c-Tgfbr2KOマウスモデルを使用し、このマウスでの前駆細胞の動態を骨髄移植後のマウスを用いて検討したが、薬剤性障害時のような前駆細胞の脱分化は生じなかった。DysbiosisによるNotch活性化の程度はそれほど強くないか、脱分化にはNotch経路以外の経路も必要である可能性があり、今後の研究課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pks陽性大腸菌を非侵襲的に検出する方法を確立できた。 100例近いヒト大腸洗浄液由来細菌DNAを保存・データベース化できており、今後別の細菌解析に使用可能である。 マウスモデルの検討により、前駆細胞の脱分化および発癌におけるNotch経路の重要性を確認できた。 マウスモデルの解析により、Dysbiosisによる腸炎発症機序と薬剤性粘膜障害の機序は異なる可能性が高いことがわかり、今後の検討課題とすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Dysbiosisによる腸炎発症機序と薬剤性粘膜障害の機序は異なる可能性が高く、これを解明する方針とする。Dysbiosisを生じるCd11c-Tgfbr2KOマウスモデルと骨髄移植の技術を組み合わせ、Dysbiosis過程における幹細胞・前駆細胞の遺伝子発現変化や細胞動態の変化を解析する。 同様のモデルを発癌モデルと組み合わせ、発癌過程におけるDysbiosisと幹細胞の相互作用について検討を加える。
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