研究課題/領域番号 |
17K09350
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松浦 文三 愛媛大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (80284420)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | モチリン受容体 / グレリン受容体 / トランスジェニックマウス / 受容体相互連関 |
研究実績の概要 |
生活習慣病や化学療法などに伴う消化管運動機能異常は重要な臨床課題の一つであり,モチリン受容体(MLNR)やグレリン受容体(GHSR)作動性物質の開発およびその臨床応用が期待されている。申請者は,2000年からMLNR,GHSRにおけるリガンド結合の分子機構の解析とin vivoにおける両受容体の生理機能の解析を継続して研究している。本研究課題は,受容体活性化機構を明らかにするとともに,生体における中枢神経系と消化器系との臓器連関,消化管ホルモン受容体の相互連関,生活習慣病における機能変化を明らかにすることを目的としている。 平成30年度は, (1) MLNRにおいてモチリン刺激では脱感作が生じ,エリスロマイシン刺激では脱感作が生じにくい機序として,受容体のubiquitin化の差はあまり関与しないこと,GRK,PKC,b-arrestinの過剰発現系および発現抑制系を用いても両者の差はみられないことを明らかにした。 (2) MLNRトランスジェニックマウスに末梢性および中枢性にエリスロマイシンを投与し,エリスロマイシンの胃排泄促進作用は平滑筋直接作用と迷走神経を介する作用の両方が存在すること,胃運動障害時にエリスロマイシンを投与すると胃運動が改善すること,5HT4受容体アゴニスト投与時にエリスロマイシンを併用すると胃運動促進の相加作用が見られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究は,① in vitroでのモチリン受容体活性化機構,脱感作機構の解析,② in vivoでのMLNRトランスジェニックマウスを用いたMLNRリガンド刺激による消化管運動機能解析,ともにおおむね当初の計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は, (1) モチリン受容体のG蛋白活性化機構については,モチリン受容体発現CHO細胞,およびモチリン受容体発現膜分画にリガンド結合後,[35S]- GTPγS,GDPを反応させ,GTPγSの結合能を測定するとともに,抑制系のGAP(GTPase activating protein)活性は,recombinant GAPと検出可能な速度でGDP解離が起こるGα変異体を用いて,解離したGDPを,GDP抗体に結合している蛍光トレーサーと置換することにより検出して測定し,G蛋白質活性化機構を解析する。 (2) MLNRトランスジェニックマウスを用いての機能解析については,MLNRアゴニスト投与時のグレリン,グレリン受容体の変化を解析しモチリン系とグレリン系の相互連関を明らかにするとともに,ストレス時あるいは中枢へのCRH投与時の食行動,活動性,消化管運動を解析しその治療法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の繰越金は216,569円であったが,研究は当初の計画通りに進展しており,特に問題はない。平成31年度は,当初の予定通り,① in vitroにおけるモチリン受容体のG蛋白活性化機構の解析,② in vivoにおけるモチリン受容体トランスジェニックマウスを用いた糖尿病や肥満,胃食道逆流症といった生活習慣病態時の消化管運動解析,を行う予定である。
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