研究課題/領域番号 |
17K09351
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊原 栄吉 九州大学, 大学病院, 助教 (80612390)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 食道アカラシア / 高解像度食道内圧検査 / サイトカインプロフィール / 経口内視鏡的筋層切開術 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、未だ病因が解明されていないアカラシア(Type I、Type II、Type III) 及び食道胃接合部通過障害 (EGJOO)において、食道粘膜と食道筋層に発現するサイトカインプロフィールの観点から病態解明することであった。以下に研究実績を示す。 (1)食道粘膜に発現するサイトカインプロフィールを用いた病態解明 2018年3月までに、計67名を本研究にエントリーした。その内訳は、食道アカラシア 22例(Type I 4例、Type II 12例、Type III 6例)、EGJOO 10例及び対照群 35例であった。食道アカラシアは対照群と比較して、有意な差を認めるサイトカインは認めなかった。一方、EGJOOにてTNF-αの発現は、対照群と比較して有意に高値であった。サイトカインプロフィールを用いたROC曲線にて解析した検討では、EGJOOのサイトカインプロフィールは食道アカラシアのそれとは統計的に有意に異なっており、EGJOOとアカラシアが全く病因・病態が異なった病気である可能性が示唆された。 (2)食道筋層に発現するサイトカインプロフィールを用いた病態解明 2017年2月から2018年3月まで、食道運動異常症に対してPOEM術を受けた中で、食道アカラシア 18例 (Type I 3例、Type II 11例、Type III 4例)に対して、食道筋層組織を採取した。EGJOO群のエントリーは達成できていない。これまでの検討では、食道アカラシアの筋層に発現するサイトカインプロフィールは対照群のそれと比較して、有意な変化は認めなかった。また、各サブタイプ間のサイトカインプロフィールについても有意な変化は認めなかった。対照群、Type I、Type IIIのエントリー数が少ないことがその原因と考えられ、さらなる検討が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)食道アカラシア及びEGJOOの粘膜層に発現するサイトカインプロフィールを用いた病態解明: 目標症例数は、Type I 20例、Type II 20例、Type III 20例、EGJOO 20例である。これまでに、食道アカラシア 22例(Type I 4例、Type II 12例、Type III 6例)、EGJOO 10例及び対照群1 35例をエントリーした。その希少性から、Type I及びType IIIの症例数のエントリーが遅れている。 (2)食道アカラシア(Type I、Type II、Type III) 及びEGJOOの筋層に発現するサイトカインプロフィールを用いた病態解明: こちらも目標症例数は、Type I 20例、Type II 20例、Type III 20例、EGJOO 20例である。現状では、食道アカラシア 18例 (Type I 3例、Type II 11例、Type III 4例)である。食道粘膜層における検討と同様に、その希少性からType I及びType IIIの症例数のエントリーが遅れている。また、EGJOOに対しては、我々が有効な内服治療を見出した経緯もあり、POEM術を受ける患者が激減した影響によってエントリーが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)食道アカラシア及びEGJOOの粘膜層に発現するサイトカインプロフィールを用いた病態解明: 今年度は、その希少性がありエントリーが遅れているType I及びType IIIの症例を集積していく。 (2)食道アカラシア(Type I、Type II、Type III) 及びEGJOOの筋層に発現するサイトカインプロフィールを用いた病態解明: こちらも、希少疾患で、エントリー数が遅れているType I 及びType III を中心に症例を集積していく。EGJOOに対しては、POEM手術を受ける患者が激減したことから、粘膜層を用いた解析のみとする。筋層を用いた解析では、アカラシア及び各サブタイプの病態解析を行う予定とする。これまでの研究にて、進行した古典的アカラシアでは、筋層間神経叢の変性・脱落が認められており、これが食道運動機能の障害の主要な原因と考えられてきた。本研究では、食道体部が無蠕動となったType Iにおいても、光学顕微鏡レベルでは形態的には神経叢に明らかな異常所見は認めていないことから、アカラシアが未だ明らかにされていない何らかの機序によって発症している可能性がある。食道運動機能を担うのは、壁内神経、ペースペーカーであるカハールの介在細胞、固有筋層平滑筋であり、アカラシアから採取した生検組織を用いて電子顕微鏡で観察することによって、これらネットワーク及び個々の細胞を評価し、アカラシアの病態解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は最終的に126598円を残した。平成30年度の消耗品として使用する予定である。
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