研究実績の概要 |
本研究では,食道扁平上皮癌におけるp53ネットワークにかかわるトランスクリプトームの全容をゲノム情報を駆使して効率的に分析した.p53ファミリーの異常、発現変化にともない変化するトランスクリプについて,機能解析へと展開し,さらに発現異常,遺伝子変異の有無,悪性度および治療効果との関連性を解析することで,食道癌を中心としたヒト腫瘍における新しい診断・治療効果予測システムの開発を試みた.今後ゲノム情報に基づいたがんの個別化医療の理想に近づく基礎研究を目指す. 上記以外の本研究に関連した研究成果 1. 血液中を流れる患者特有のがん由来DNA(circulating tumor DNA, ctDNA)について、NGS、およびデジタルPCRを用いた超高感度検査を確立し、食道扁平上皮患者診療における実用性を明らかにした。Gastroenterology. 160: 463-465, 2021. 2. 十二指腸腺腫・粘膜内癌102病変について、新規に開発した75のがん関連遺伝子で構成される遺伝子パネルを用いて変異解析を行った。その結果、腺腫から粘膜内癌に到る病変の頻度は低く、adenoma-carcinoma sequenceの関与は限定的であることが示唆された。J Pathol. e5529, 2020. 3. 新規p53標的遺伝子としてARVCFを同定した。機能解析により、ARVCFは腫瘍特異的なスプライシング変化に関与し、腫瘍抑制に寄与する事を明らかにした。Oncogene. 39: 2202-2211, 2020. 4. 12の組織由来の79種類のヒトxenograftモデルについて、全エクソン解析を行い、9種類の抗癌剤の感受性に関連する162のバリアントを同定した。PLoS One. 15: e0239614, 2020.
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