研究課題/領域番号 |
17K09355
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
溝下 勤 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (40347414)
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研究分担者 |
片野 敬仁 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (50768372)
城 卓志 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 名誉教授 (30231369)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | in vitro 三次元培養腺管 / 胃幹細胞 |
研究実績の概要 |
我々は、研究目的である「臨床に外挿できるin vitro胃・大腸発癌モデルの樹立」を確立するため種々の検討を行い、平成30年度は、以下の1.及び2.の研究成果を得た。1.マウス腺胃由来組織を長期in vitro 三次元培養系(Am J Pathol., 185, 798-807, 2015.)で化学発癌剤N-methyl-N-nitrosourea(MNU)やHelicobacter pylori関連因子(cytotoxin-associated gene A以下CagA、Vacuolating toxin A以下VacA、など)などと共培養し発癌過程と腸型化を検索し、同様に、ラット及びマウス大腸由来組織を上記の長期in vitro 三次元培養系で化学発癌剤2-Amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine(PhIP)や炎症性腸疾患関連因子(Tumor Necrosis Factor以下TNF、interleukin-6以下IL-6など)と共培養し、異常陰窩巣(Aberrant crypt foci)の解析を含めて発癌過程と胃型化を検索した。2.炎症性腸疾患の病態形成にTNFが重要であることが知られており、生物学的製剤であるadalimumab及びinfliximabを投与した炎症性腸疾患症例(潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病)について臨床的な検討を行って英語論文を作成し(Dig Liver Dis., in press, 2019.; Case Rep Gastroenterol., 13, 37-49, 2019.; JGH open, in press, 2019.)、また、潰瘍性大腸炎を母地として発症した大腸癌(colitic cancer)症例について、特に胃型・腸型形質発現の観点から発癌過程を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究計画調書記載内容と照らし合わせた研究の進行度は、以下の如くである。4.Helicobacter pylori関連因子を用いたin vitroでのマウスおよびスナネズミ胃培養腺管の腸型化プロセスの解明:in vitro 三次元培養系で、マウス腺胃由来組織を化学発癌剤であるMNU及びHelicobacter pylori関連因子(CagA、VacA、など)と共培養し、胃型粘液上皮マーカー(MUC5AC、MUC6)・腸型粘液上皮マーカー(MUC2、villin)の発現を含めて発癌過程及び腸型化を検索中である。5.炎症性腸疾患関連因子を用いたin vitroでのマウス腸培養腺管の胃型化の制御機構の解析:ラット及びマウス大腸由来組織を上記の長期in vitro 三次元培養系で化学発癌剤であるPhIPや炎症性腸疾患関連因子(TNF、IL-6、など)と共培養し、胃型・腸型粘液上皮マーカー発現を含めて発癌過程及び胃型化を検索中である。6. 長期経過の潰瘍性大腸炎に合併したcolitic cancer cellの胃型化の分子病理学的解析:潰瘍性大腸炎を母地として発症した大腸癌(colitic cancer)症例について、胃型・腸型形質発現の観点から発癌過程を検索中である。また、TNFに対する抗体製剤(adalimumab及びinfliximab)を投与した潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病の各症例について臨床的な検討を行い、英語論文を作成した(Dig Liver Dis., in press, 2019.; Case Rep Gastroenterol., 13, 37-49, 2019.; JGH open, in press, 2019.)。 以上より、区分は(2)と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、研究計画調書記載内容と照らし合わせて今後の研究の推進方策につき以下のことを考えている。 まず前述の「4.Helicobacter pylori関連因子を用いたin vitroでのマウスおよびスナネズミ胃培養腺管の腸型化プロセスの解明」、「5.炎症性腸疾患関連因子を用いたin vitroでのマウス腸培養腺管の胃型化の制御機構の解析」、については、さらに検討を進める。特に、胃から腸(腸型化)あるいは腸から胃(胃型化)への形質転換の解明に重点を置いて解析を進める予定である。具体的には、Helicobacter pylori関連因子(CagA、VacA、など)と腸型化、炎症性腸疾患関連因子(TNF、IL-6、など)と胃型化の関連性について検討したいと考えている。さらに、「6. 長期経過の潰瘍性大腸炎に合併したcolitic cancer cellの胃型化の分子病理学的解析」にも力点をおいて研究を進める予定である。我々は、すでに潰瘍性大腸炎を母地として発症した大腸癌(colitic cancer)症例の胃型・腸型形質発現を含めた病理学的解析を進めている。加えて、TNFに対する抗体製剤(adalimumab及びinfliximab)を投与した潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病の各症例について臨床的な検討を行い、英語論文を作成した(Dig Liver Dis., in press, 2019.; Case Rep Gastroenterol., 13, 37-49, 2019.; JGH open, in press, 2019.)。これらの臨床的な解析もさらに進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった実験動物であるマウス(BALB/c, CLEA Japan, Inc.)及びラット(F344, Charles River Laboratories)、各種薬品(ウェスタン解析関連試薬、PCR関連試薬、トランスフェクション関連試薬、等)、病理組織・細胞培養関連試薬及び器具、胃型(MUC5AC: Novocastra Laboratories; MUC6: Novocastra Laboratories)・腸型(MUC2: Novocastra Laboratories; villin: Transduction Laboratories)粘液上皮マーカーなどの免疫組織化学染色関連の各抗体が平成30年度の年度末(平成31年3月末)までに購入できなかったため。使用計画:平成31年度に上記記載事項を購入し、研究を継続する予定である。
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