研究課題/領域番号 |
17K09356
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
片岡 洋望 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40381785)
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研究分担者 |
野本 貴大 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00734732)
矢野 重信 有限会社ミネルバライトラボ, 光医療科学部, 光医療科学部部長 (60011186)
野元 昭宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60405347)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光線力学療法 |
研究実績の概要 |
光感受性物質クロリンの側鎖を修飾し,グルコースを連結したN003HP-G,およびマンノースを連結したN003HP-M,およびその側鎖を修飾した新規光感受性物質を化学合成し,精製した.食道癌細胞株 (OE21, KYSE30),胃癌細胞株 (MKN45),大腸癌細胞株 (HT29)を用い,赤色光線660nmのLED照射によるin vitroの光線力学療法(Photodynamic therapy: PDT)の実験では,いずれも,現行の第2世代光線力学療法の保険適用薬剤であるTalaporfin sodiumによるPDTよりも優れた殺細胞効果を示した.また体内での薬剤の代謝速度の延長を目的とし,N003HP-Gのグルコースの側鎖をアセチル化したアセチル化003HP-Gも,他の薬剤とほぼ同等の強い殺細胞効果を示した. さらにFACSCantII (BD Biosciences)を用いて,癌細胞へのN003HP-Gの取り込みをTalaporfin sodiumと比較検討したところ,N003HP-GはTalaporfin sodiumの約70倍から190倍の癌細胞内への取り込みを示した.マウス大腸癌細胞株CT26を皮下移植したallograft皮下移植モデルでのin vivoでの検討でも,N003HP-Gは非常に強力な殺細胞効果を発揮した.同じ条件でTalaporfin sodiumでのPDTは全マウスが死亡したことから,現行薬のTalaporfin sodiumよりも,体外排出が良好でかつ低毒性であることが推測された.また癌細胞特異性を見るための食道上皮の不死化細胞Het-1Aと食道癌細胞株OE21に対する薬剤の取り込みを比較したところ,有意に食道癌細胞に薬剤の取り込みが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
N003HP-Gについては,in vitroで強力な抗腫瘍効果(PDT効果)を確認,FACSを使用した細胞内取り込みも良好で,allograftモデルでのin vivoでの効果も強力であることを確認した.また癌細胞特異性を見るための食道上皮の不死化細胞Het-1Aと食道癌細胞株OE21に対する薬剤の取り込みを比較したところ,有意に食道癌細胞に薬剤の取り込みが確認された.これまでの所,ほぼ当初予測された効果を確認できている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は癌細胞のみならず,癌間質のTumor associated macrophage (TAM)への殺細胞効果も期待されるN003HP-Mや,新規アセチル化薬剤であるアセチル化N003HP-Gなどの新規薬剤のin vitroおよびin vivoでの癌細胞への取り込み,PDTによる殺細胞効果を検討して行く.また,薬剤のミセル化の効果も検討して行く.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:国外での学会発表を行わなかったこと.また,予定より順調に実験が進行し,物品費が無駄なく必要最低限に近い状況で施行できたから. 使用計画:2018年度の実験消耗品費および学会発表の目的の旅費に使用予定である.
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