研究実績の概要 |
1) 臨床検体による検討 2019年3月末の時点で、全国の施設から、Hp陰性症例を主に283例の内視鏡による生検組織をお送りいただき、まずHelicobacter heilmannii-like organism (non-Helicobacter pylori Helicobacter)の有無を PCR法により検討し、陽性の症例については、さらに二段目の検討として Helicobacter suis, heilmanniiの有無について検索した。その結果、HHLO陽性例は50例(17.3%)認めた。また、Hp陽性例は35例で、混合感染例は3例のみだった。PCRによるHp陽性例を除外した、純粋のHHLO単独陽性例は、47例だった。そのうち、H. suisは、17例(36%), H.heilmanniiは9例(19%)の症例で同定された。ペットに関しては4例犬の飼育歴があったが、猫、その他の家畜については明確でなかった。また、犬飼育歴陽性者のうち、2例は H.suis陽性で、残り二名は同定できなかった。地域別には、北海道 15例、関東 14例、中部 10例、近畿3例、東北2例、中国2例、九州2例、四国1例の陽性者を認めた。陽性率としては、北海道 23% (15/64), 東北 50% (2/4), 関東 22% (14/63), 中部62.5% (10/16), 近畿 42.8% (3/7), 中国12.5% (2/16), 四国50% (1/2), 九州50% (2/4)だった。 2) in vitroの検討 培養されたハイルマニイ菌について pHによる影響 菌の形態については実体顕微鏡、免疫組織化学、電子顕微鏡(ruthenium red en bloc染色)を用いた。菌の運動性はpH3に比し、pH5以上で著明に低下し、coccoid formの割合が有意に増加した。
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今後の研究の推進方策 |
以前より共同研究を行っているミャンマー、ネパール、バングラデシュの症例についてPCR, ELISA法による検討を行い、本邦との比較からハイルマニイ菌の胃疾患形成に対する差異からその意義を解析する。 また、従来の検討から示唆されている肝臓、肺、唾液腺、涙腺組織の未固定cryostat 切片を用い、NHPHの有無について開発中のNHPHに対する特異抗体, CD70抗体などを用いた検討を行い、その病因との関連性を検討する。 さらに、Ghent大学のBram Flahouらとの共同研究により、bilayer culture methodによる培養細菌(H. heilmannii, H. suis, H.felis)の検討を行う予定である。
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