研究課題/領域番号 |
17K09365
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
永田 尚義 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (10562788)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 腸内細菌 / 口腔内細菌 / プロトンポンプ阻害薬 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、大規模臨床データと糞便中の微生物ゲノムデータを統合し、PPIと関連する微生物叢変化(腸内細菌叢、真菌叢、ウイルス叢)を明らかにすることである。初年度は、研究計画の倫理委員会の承認を得た。さらに、検体収集からゲノム解析の一連の流れの研究体制を構築した。 一方、多数例の症例から糞便中の微生物叢解析を行う前に、腸内細菌叢の安定性を保証する糞便採取法や保存方法を確立する必要性が生じた。そのため、当初の研究計画では予定していなかった予備研究を行い便採取法、保存法のプロトコール構築を行った。予備研究では、以下の知見を得た。①大腸内視鏡の前処置で使用する経口洗浄剤(下剤)直後の便は、通常便と比較し腸内細菌叢および代謝産物(metabolites)が有意に異なるため、便試料は腸管洗浄液前に採取することが望ましいと判明。②保存液がない容器で便を採取する場合、冷蔵では1日、室温では排便当日に解析場所まで持参する必要性が判明。③一方、Cary-Blair(CB)培地容器は、保存過程による特定の細菌変化を抑制するため空容器と比較し長い保存が可能であり、低コストな点も踏まえると多くの施設で利用でき、大規模腸内細菌研究に使用できると判明。④また、CB培地は責任細菌種の分離培養ができる可能性を有しており、無菌マウスへの投与実験に発展できると考えられた。 今後は、解析プロコールに準じた便採取法による大規模データベース構築を引き続きおこない、「PPIと関連する微生物叢の変化」を明らかにしていく。さらに、腸内細菌叢だけでなく、真菌叢やウイルス叢の変化も調べて行く予定である。また、唾液採取も同時に行っているため、PPIと関連する口腔内細菌叢の変化への研究にも発展させていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大規模糞便微生物ゲノムデータからPPIと関連する腸内細菌種を同定する計画の前に、倫理委員会の承認を得る必要があった。また、検体収集から臨床情報収集、腸内細菌解析、バイオインフォマティクスの研究体制を構築する必要があった。その研究基盤の構築に時間を要した。さらに、大規模腸内細菌データを構築するに当たって、腸内細菌叢の変動がない(安定した)糞便採取法や保存方法を確立する必要があり、プレリミナリーな予備研究を行った。したがって、予定していた計画の一部しか実行できていないため”やや遅れている”と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度で研究の基盤構築および糞便採取・保存方法の予備研究を行ったことで、2年度目以降の研究の加速が期待できる。具体的には、2,000例以上の大規模な腸内細菌メタゲノム解析からPPIと関連する細菌叢の変化を明らかにし、さらに、腸内細菌だけでなく、真菌叢やウイルス叢の変化も調べる。また、唾液採取も同時に行っているため、PPIと関連する口腔内細菌叢の変化への研究にも発展させていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、倫理申請、研究体制の基盤構築をメインで行った。さらに、試料収集方法、保存方法の標準化を目指したプロトコール構築を行った。そのため、研究計画に記載した大規模な検体解析は行うまえに初年度は終了したため、一般経費である試薬などの費用が少なかった。また、研究代表者自身で臨床情報収集などを行うことができたため、人件費を使用する必要性がなかった。2年目以降にに解析費用や人件費が必要になると予想される。
|