研究課題
本研究は申請者らがこれまで見出してきた「食餌や腸内細菌由来の脂質抗原と腸管上皮細胞におけるCD1d発現に着目したこの機構の調節がIBDの治療に繋がる」という独自の概念や知見を基盤として、腸上皮細胞における脂質抗原提示の調節による脂質応答性リンパ球制御の可能性について追及している。その結果、本研究では当該研究期間に以下のような成果が得られた。1)マウス腸上皮細胞を阻害剤の存在下で培養し、継代を継続できる条件を見出した。2)ウイルスベクターGFP-RVおよびDsRed-RVによってこれらの腸上皮細胞株におけるMTPの発現抑制を誘導した上で、同様に継代を継続できる条件を見出した。3)その条件下においては、対照群と比較して細胞表面におけるCD1dの発現低下がみられることを共焦点顕微鏡で確認した。4)一方、これらの培養腸上皮細胞に対する阻害剤の影響、あるいはレトロウイルスベクター自体の感染やshRNAによるMTP遺伝子の発現抑制は、細胞の増殖やviabilityに影響を与えないことが確認された。これらの研究成果は上記の条件下における腸上皮細胞株による抗原提示機能をin vitroで詳細に解析できる可能性が保証され、またその条件下における免疫学的解析が可能であることを示唆する。さらに現在、これらの細胞を用いた生化学的解析や機能的解析にむけて、その条件検討を進めている。さらに、より生理的な条件下での解析を実現するために、野生型マウスの大腸組織から上皮細胞を単離し長期培養した後に、上記と同様の実験系を樹立することを試みている。
2: おおむね順調に進展している
腸管粘膜の免疫調節機構は上皮細胞と脂質応答性リンパ球のクロストークが根幹にあり、上皮細胞の抗原提示能がその中枢を担っていることに着目しているが、今回我々は腸上皮細胞株を用いたin vitroにおける阻害剤存在下の実験系や遺伝子発現抑制系を樹立できたこと、またこうした培養上皮細胞に対する安全性を確認出来たことは大きな成果であるといえる。
次年度は細胞間クロストークにおけるこの分子メカニズムに着目し、これをさらに詳細に解析するためにin vitroおよびex vivo実験系では共焦点顕微鏡下での細胞内小器官の観察、分子生物学的解析、そして混合培養系でのサイトカイン産生や増殖能の解析、またin vivo実験系では遺伝子改変動物における疾患モデルの誘導とその臨床および病理学的解析、フローサイトメトリー、サイトカイン測定、また免疫組織染色などを行う予定である。
理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。使用計画: 検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 10件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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