研究課題/領域番号 |
17K09375
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
堀口 里美 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特別研究員 (00595283)
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研究分担者 |
堀口 和秀 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (20377451)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 消化管運動 / カハール介在細胞 / 発現解析 / マウス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、腸炎疾患の回復期における消化管運動調節性細胞(カハール介在細胞;ICC)の再生に関わる増殖・転写因子の作用機序の解明である。本年度はまずTNBS投与マウスの炎症期および回復期におけるICCの分布を調べ、さらに増殖マーカーであるKi67を用いて回復過程における筋層での細胞増殖とICCの関係について検討した。その結果、輪走筋最内層のKIT発現が早期に回復し、筋層間や各筋層内のKIT発現の回復は遅れる傾向が見られた。TNBS投与7日目では筋層内のKIT発現がコントロール群と同レベルにまで回復していることが確認された。次に、TNBs投与後の消化管筋層における増殖細胞を解析することで、ICCの回復過程について検討した。凍結切片による免疫染色の結果、TNBs投与2-3日目におけるKIT陽性反応の減少が確認された。同時期において、細胞増殖マーカーであるKi67陽性反応は、おもに筋層内に浸潤した白血球に認められた。TNBs投与4日目以降、筋層におけるKIT発現が徐々に回復し、一部のKIT陽性細胞の核にKi67陽性反応が観察された。BrdUを飲水投与したマウスの筋層全載伸展標本を用いた免疫染色の結果、KIT陽性細胞におけるBrdU標識は無処置マウスに比べTNBs投与マウスで有意に増加していた。 また、回復期における因子の同定のため、TNBs投与5日目の筋層のリアルタイムPCRによる発現解析を行った。結果として、TNBS投与後5日目の筋層ではKIT及びその因子であるSCF発現の上昇が認められた。 以上の結果から、TNBs腸炎の回復期におけるICCの回復の少なくとも一部はICCの増殖によることと、その回復にはKIT-SCFシグナリングが関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TNBS炎症期と回復期筋層における分子動態を検討する必要があった。本年度の研究によりTNBs投与後の適切な細胞採取時期について決定することができ、研究の進行は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の結果をもとに、TNBS投与マウスの炎症期および回復期における筋層及び粘膜の網羅的遺伝子解析を実施する。具体的には筋層及び粘膜より抽出したmRNAよりcDNAを合成後、サブトラクティブ・ハイブリダイゼイション法により、正常マウスのICCからのmRNAとの差次的遺伝子ライブラリーを作製し、マイクロアレイ化を行う。更に、上記2種類のcDNAから作製したプローブを用いて、炎症期から回復期で発現変化する遺伝子のスクリーニングを行ない、特異的遺伝子を特定する。また、同時にマイクロアレイを行って網羅的遺伝子発現解析を実施する。得られた遺伝子のうち、発現変化量の多い遺伝子について、シーケンスにより塩基配列を解読し、BLAST searchを用いて相同性検索を行うことで対象遺伝子の同定を行う。この解析については研究代表者、分担者ともに別の実験系で実施実績があり、問題なく進行すると思われる。その結果得られた遺伝子について、免疫染色法あるいはin situ hybridization法と定量PCR法により検定する。以上の実験から得られた候補遺伝子のうち、ICCやSMCの障害・再構築、あるいは病態時および回復期における両者の相互作用に関与する可能性が高いものについて機能解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)達成度の項目に示したとおり、予定していた解析依頼が年度終了時点では行えなかったことにより次年度使用額が発生した。
(使用計画)今年度の早い時期に解析依頼に出すことで使用する。
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