研究課題/領域番号 |
17K09376
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
山出 美穂子 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10464124)
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研究分担者 |
古田 隆久 浜松医科大学, 医学部附属病院, 准教授 (10303546)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 上皮間葉転換 / EMT / がん転移浸潤 / 遺伝子発現 / 抗腫瘍薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、がんの転移浸潤メカニズムのひとつである上皮間葉転換 (Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT) を制御する新規遺伝子を検索・検討するものである。具体的には、NCI- 60 cell lines をはじめとする複数のがん細胞・がん組織データベースより検索・検出し、その遺伝子の EMT における役割を明らかにすることで、がん転移浸潤のメカニズムの解明および新たながん治療法の開発に貢献することを目的としている。 また、近年 EMT 制御遺伝子の発現レベルとがん薬物療法の感受性や予後との関連性が報告されており、本遺伝子においても現在化学療法に用いられている薬剤の感受性に与える影響を解析し、がん薬物療法の新たなバイオマーカーとなるか探ることも目的としている。 前年度まで、がん細胞・がん組織の遺伝子データベース解析により抽出した遺伝子 LIX1-like(LIX1L)の発現レベルを大腸癌細胞株で確認し、LIX1Lの発現レベルをノックアウトしたKO細胞をCRISPR-CAS9 systemを用いて作成した。次いで、各細胞のLIX1L発現レベルおよびEMT関連遺伝子のタンパク発現レベルをWild typeの細胞株(WT細胞)と比較検討し、細胞の転移浸潤能を比較検討する実験を開始していた。今年度は、移動能をWound healing assayで、浸潤能についてはMatrigelを用いたassayで、現在確認実験を行い、さらに3D培養実験を検討している。遺伝子発現レベルではqRT-PCRおよびWestern blotでmRNA発現、蛋白発現レベルを比較検討し、抗腫瘍薬に対する感受性の検討を予定している。また、その他の新規EMT関連遺伝子についてもデータ解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん細胞・がん組織の遺伝子発現データベース解析をもとに、がんの転移浸潤に関与するEMT関連遺伝子と同等の発現パターンを示す遺伝子LIX1Lを割り出し、同遺伝子について大腸癌細胞株を用いて実験を開始した。まず大腸癌細胞株RKOのLIX1L発現レベルが高いことを確認した。次いで、CRISPR/Cas9 systemにより、RKO細胞株のLIX1L-KO細胞を樹立した。WT細胞とKO細胞を用い、LIX1L遺伝子発現レベルを比較、確認した。 次に、WT細胞とKO細胞を用い、Wound healing assayにより細胞の移動能を比較検討した。Wound healing速度に若干のばらつきが確認され、現在検証実験を行なっている。またMigration assayおよびInvasion assayでは、KO細胞がより高度の浸潤能を示す傾向にあり、実験条件を整えた確認実験中である。さらに3D培養条件における実験を検討している。 あわせて、WT細胞、KO細胞の、EMT関連遺伝子発現について、Western blottingによりタンパク発現レベルを、またqRT-PCRによりmRNA発現レベルを比較検討し、検証実験を進めている。今年度は検証実験の結果に基づき、抗腫瘍薬に対する感受性を比較検討する実験を予定している。また、上記データベース解析で得られた他のバイオマーカーとして有望な遺伝子についても検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の、Wound healing assayおよびMigration assay、Invasion assayにより、LIX1L遺伝子のノックアウトが大腸がん細胞の移動・浸潤能に与える影響を明らかにする。また、タンパク・mRNAレベルで遺伝子の発現状況を比較検討し、既知のEMT関連遺伝子、制御遺伝子にLIX1Lのノックアウトが及ぼす影響を調査する。いずれも現在、検証実験が進行中である。 これらの結果をふまえ、マウスモデルにおける実験を検討する。また、LIX1L遺伝子発現レベルが抗腫瘍薬の殺細胞効果やDNA傷害に与える影響の比較を検討する。さらに、遺伝子データベース解析で抽出された他の遺伝子発現レベルについても検討を進めていく。
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