本研究は、がんの転移浸潤メカニズムのひとつである上皮間葉転換 (Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT) を制御する新規遺伝子を検索・検討することを目的に開始した。具体的には、NCI- 60 cell lines、CCLE、TCGAといった複数のがん細胞・がん組織データベースよりEMT関連遺伝子の発現レベルを解析し、強い関連を有する遺伝子を抽出した。得られた遺伝子の EMT における役割を明らかにすることで、がん転移浸潤のメカニズムの解明および新たながん治療法の開発に貢献することを目的とし実験計画を作成した。EMT 制御遺伝子の発現レベルとがん薬物療法の感受性や予後との関連性が報告されていることから、本遺伝子における抗腫瘍薬の感受性に与える影響も解析し、がん薬物療法の新たなバイオマーカーとなるかも検索している。 前年度まで、がん細胞・がん組織の遺伝子データベース解析により抽出した遺伝子 LIX1-like(LIX1L)の発現レベルを大腸癌細胞株RKO等で確認し、LIX1Lの発現レベルをノックアウトしたKO細胞をCRISPR-CAS9 systemを用いて作成した。次に各細胞のLIX1L発現レベルおよびEMT関連遺伝子のタンパク発現レベルをWild typeの細胞株(WT細胞)と比較検討し、細胞の転移浸潤能を比較検討する実験をWound healing assayやMatrigelを用いたassayで行なった。遺伝子発現レベルではqRT-PCRおよびWestern blotでmRNA発現、蛋白発現レベルを比較検討してきた。EMT以外の遺伝子との関連も検索するため、Microarrayで検討中である。また、臨床使用されている抗腫瘍薬に対する感受性の検討を開始している。
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